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天のしずく 辰巳芳子 “いのちのスープ”

2012年作品、河邑厚徳監督。

日本の食に提言を続ける料理家・辰巳芳子。 彼女が病床の父のために工夫を凝らして作り続けたスープは、やがて人々を癒す“いのちのスープ”と呼ばれるようになり、今では多くの人々が深い関心を寄せている。
いのちの始まりに母乳があり、終わりに唇をしめらす末期の水がある。 人の命は絶えることのない水の流れに寄り添って健やかに流れる。 本作で描かれる辰巳のスープにも長い物語がある。
調理に至る前には、海や田畑など日本の風土が生み出す生産の現場があり、調理後にはスープを口にする家庭や施設、病院など多様な人の絆が見えてくる。
脳梗塞で倒れ、嚥下障害(えんげしょうがい)により食べる楽しみを奪われた父。 その最後の日々を支えたのが、料理研究家の草分けだった母・浜子とともに工夫して作った様々なスープだった。 これがいのちのスープの原点となる。
スープに使う食材を作り出す全国の生産者たちは、作物に対する誠実な志を持ち、辰巳に食材を提供する。 旬の作物を育てる繊細で美しい自然風土。 それぞれの素材や性質を生かして、嬉しそうな表情で丁寧に調理する辰巳。
幼児から老人まで、スープを口にする人々の姿が、交響曲のようにいのちの響きを奏でてゆく。 ここで描かれるスープの物語は、辰巳が唱える“いのちと愛”への道筋を、食を通して示してくれる・・・

“おつゆ”いわゆる“スープ”ではなくこの響きには味わいがありますね。 私も料理は必要に迫られ作りますが、なかなか時間が取れず、手がか からない簡単な料理しか作れません。 まあ2人分しか作らないので、どんどん手抜きになっていきますが、
3.11の震災後から始まった撮影なんでしょうか。 冒頭部分で、20011年の春、花が狂い咲きをしている、植物が何かを教えている、そういう辰巳さん。 震災後初めてのスープ教室での、辰巳さんの言葉に「地震津波なら、日本人は何とか乗り越えられる。でも原発事故は重大だ」
食物は旬があり、その旬を待ち構えてその瞬間を食材とする。 それには、必ず美しい自然風土が必要、しかし原発事故によってそれが犯されようとしている。 その危機感というのは計り知れない。 そう言っているんですね。
“食は生死を分かつ”これからの自分たちの課題と辰巳さんは言っておられます。 いかに安全な食材を使うか。 しいてはこの人類史上、類を見ない大災害という原発事故、狭い国土で起こってしまった国難を、早くも忘れがちな今の情勢を、今一度、目を覚まさせてくれた作品でしたね。
正直、手間をかけた料理を作れない者には、ついて行けない部分のあるドキュメンタリーでしたが、食の大切さを、自然との関わり合い、その自然が根底から犯されている危機を訴える彼女の姿勢には感銘いたしました。

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この方が辰巳さん

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自然を確かめる彼女

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彼女にとって“おつゆ”とは

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各生産者の協力が

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大地の恵

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