「俺には分かる。牛乳の中にいる蝿、その白黒はよくわかる、どんな人かは、着ているものでわかる・・・・」 一面のがれきの山。 たった一人呆然と立ちつす男。
東日本大震災の後、家を失った者たちが川岸のブルーシート小屋で生活をしている。 一人の少年が打ち上げられた洗濯機の中から、拳銃を見つけた。 頭を撃ったところで目が覚めた。 家の脇に置いてある洗濯機の中を見てみる。 その中には拳銃はない。 やはり夢だったのだ。
彼は住田佑一(染谷将太)、15歳。 彼の願いは“普通”の大人になること。 彼は川岸で貸しボート屋をやっている。 母は飲んだくれて寝ている。 父の姿はない。 横にホームレスたちが住んでいる。 彼のことをさん付けで呼んでいる。
授業で歯の浮くような理想を語る教師が夢を持てと力説している。 しかし住田は普通に生きればいいという。 でもそんな住田に賛同する茶沢。 しかし彼女は住田がほかの物とは違うと感じている。
ホームレスたちは住田が好きで、ボート屋を手伝っている。 飾りつけをしたり、ボート屋が上手くいくように力になろうとしている。
時々父が来る。 決まって母がいない時に来る。 しかし父は言う。 「お前がいなければよかった。死んでくれないか。そうすれば保険金が入って俺は幸せになる。」 そして決まって殴られる。
そしてある日母がいなくなってしまった。 それから住田は学校にも行けなくなり、ボート屋で稼ぐしかないと決心する。 しかし暴力は父だけではなかった。 父の借金を取り立てに来るヤクザもいた。 追い詰められていく住田だが、それを見ていたホームレスの夜野(渡辺哲)は途方に暮れていたが、スリの若い男を見つけ彼と一攫千金の手段をとる…
どうして住田に茶沢が入れ込むのか? 初めは変わった女の子という感じだけでしたが、実は同じ環境の少女だったことから、物語がはっきり見えてきます。 しかしそれに気づくことができない住田は、決定的なことをしてしまいます。
この作品で主人公の二人の迫真の演技は、第68回ヴェネツィア国際映画祭にて新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞しましたが、それもうなづける演技でした。 ラストのハッとさせる瞬間と、二人が警察に向かって叫びながら走るシーンは、殺伐とする作品の中何故かじわっと来ました。 園監督の人間のむき出し感を前面に出した監督ならではの作品ですが、今上映中の「希望の国」のプロローグなのでしょうか? 圧倒的な存在感抜群の作品でした。
祐一の住んでいるボート屋
母とここで貸しボート屋をしている、手伝うホームレスたち
リニューアルをした
しかし母がいなくなり途方に暮れる祐一に景子が協力をする
彼女はどうして祐一を手伝うのか?
傷つく祐一に
そして・・・