anttiorbの映画、映像の世界

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野火

2015年作品、塚本晋也監督、主演。

第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、分隊長(山本浩司)から、お国に貢献できない体ではダメだと言われ、野戦病院行きを余儀なくされる。
5日分の食糧、もちろん芋なのだが、もって行くと、そこにいた軍医(山内まも留)にどこが悪いのかと聞かれる。 胸を患ったと言うが、そこにいた怪我人たちはもう生きているのが精いっぱい、死を待っているようなものばかりだった。
そして田村は食料だけを取られ、すぐに退院させられてしまう。
再び戻った部隊からも入隊を拒否され、何度も行ったり来たりする中で、彼は彷徨っているときに狼煙のようなものを見つける。 そこに村があるのかと思い、彼の足は自然とその方向に向かうのだった。
彼は数少なくなった非常用の芋を持っていたが、芋を生では食べられない。火が必要なのだが、彼は火を起こすことができないのだった。
さまよう中、再び分隊に来てしまうが、そこで持っていた芋を取られそうになった時、どこからともなく炎が近づいてきて、その男を焼き殺してしまい、さらに、分隊の小屋に火矢が襲い、全焼してしまい、分隊は全滅してしまうのだった。
彼は完全に行き場を失い、果てしない原野を一人彷徨う事になってしまう。途中、空腹と孤独、そして容赦なく照りつける太陽の熱さと戦いながら彼が目撃したものは、想像を絶する地獄絵図であった…

壮絶な作品という事は分かっていましたが、確かに見終わった後、ため息が出る作品でした。
先日観た「白鯨との戦い」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13831190.html でも、海上でのサバイバルを描いていましたが、今作の画き方は比較にならないほどの過酷さですね。 監督、主演、脚本、製作、編集、撮影すべて塚本晋也自ら行い、途中資金が行き詰って完成が遅れたことも語られています。
彼が構想したのは20年前という事ですが、じゃあいつ作るのか? そこが大きな問題点だったそうです。 確かにこの作品は、観る人も、またそれ以上に見る時期を選ぶ作品ですね。 どうして今作ったのか? それは見ていただくと監督のメッセージが、驚くほど伝わってくると思います。
今作は、都内の上映が終わり、一部渋谷では今も限定上映をしていますが、私の家からは近い方の川越スカラ座で見てきました。
この劇場では「アクト・オブ・キリングhttp://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11982535.html 「ルック・オブ・サイレンス」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13373389.html という、やはり問題作を見ているんですが、もちろんそれ以外の作品もかかるんですね。 今回は会員登録をして、なるべく足を運んで行こうと思いました。
テーマは、やはり戦争体験者がどんどんいなくなっていく日本の現状、そしてどんどんまた戦争に近づきつつある日本、世界の情勢を憂えた作品になっています。
戦場に行った者が生き残るには?、武器も無く、食料が尽きたとき、人はどうやって生き延びていくのか? 答えはもっとも単純な事なんですね。 人間の生きるという本能に実に忠実になっていくんですね。
不謹慎かもしれませんが、自決して行けるのはまだいいのかもしれません。でも普通の人間は、故郷への郷愁、家族への思いをそんなに簡単に断ち切れはしないでしょう。
主人公は奇跡的に生還するんですが、彼が背負ったトラウマは一生、いや死んでも消えないだろうと思わされる作品でした。

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行くあてが無くなってしまった田村

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容量の良い安田

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途中、出会う他部隊の兵士

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そしてあるところに向かい脱出できることを知る

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ここを超えると、しかし

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生き残った田村は永松と会う

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