anttiorbの映画、映像の世界

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葛城事件

2016年作品、赤堀雅秋監督、三浦友和主演。

どこにでもありそうな郊外の住宅地。 ボソボソと 『バラが咲いた』 を歌いながら、葛城清(三浦友和)は、古びた自宅の外壁に大量に落書きされた “人殺し”、“死刑” などの誹謗中傷をペンキで消している。 やがて庭に移動すると、庭木にホースで水を撒きながら、ふとこの家を建てた時に植えたみかんの木になる青い実に手を伸ばす。
親が始めた金物屋を引き継いだ清は、美しい妻・伸子(南果歩)との間に2人の息子も生まれ、念願のマイホームを建てる。 思い描いていた理想の家庭を築き上げたはずだった。 しかし、その想いの強さが、家族を抑圧的に支配するようになっていたことに、清は気付いていなかった。
長男・保(新井浩文)は、子供の頃から従順でよくできた子供だった。 そしてある日彼は家を出て独立すると言い出す。 蓄えもあるし、早急に出て行こうとする保は、程なく結婚をして、マンションに住み始める。
しかし、気の弱い保は、営業成績がまったく上がらず、とうとう会社からのリストラされてしまう。 しかしそれを妻には言うことができず、公園で時間を潰し、父のところに行ったりしていた。
一方、堪え性がなく、アルバイトも長続きしない次男・稔(若葉竜也)は、ことあるごとに清から責められ、理不尽な想いを募らせる。 そして、近所のおしゃべりな主婦たちに怒りを募らせ、放火事件を起こしてしまう。
そんなある日、清に言動を抑圧され、思考停止のまま過ごしていた伸子が不満を爆発させ、稔と共に家出。 これをきっかけに、葛城家は一気に崩壊へと向かってゆくのだった・・・

首都圏公開はこの日で終わりということで、ギリギリ最後の回にいけました。 結構駆けつけてきた客で混んでいました。
監督は俳優活動が主の赤堀雅秋、監督は3作目、前作は未見ですが 「その夜の侍」。 舞台で好評だった作品を自らメガホンを取って映画化にしているという作品は、今作もそのようです。
主役は三浦友和、最近こそ悪役も演じていますが、今作は悪役と単純にいえない複雑な役でしたね。 どこにでもいる中年男性、団塊の世代くらいでしょうか、この清という男は、親が築いた店を継いだだけで、あまり苦労はなかったようですね。
普通に生きているようで、あまり妻や、息子たちの心の奥を図ろうとはしないで生きてきました。 でもそれでも何事もない家庭もいくらでもありますし、ある意味彼は不運なのかもしれません。 しかし、どこかでちょっと立ち止まって足元を見つめていたら? そんな男でしたね。
このあと次男の稔は決定的な過ちを起こしてしまい、死刑囚となって行きます。 そこにある女性が現れるんですね。 田中麗奈が演じているんですが、彼女の立ち位置がどうにも奇妙ですね。 死刑否定論者ということなんですが、身内でもないし、友達でもない。 彼女が獄中の稔と婚姻届を出すんですね。
現代のある家族の物語、救いのないドラマ、でもリアルな物語でした。

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4人家族、しかし大きな綻びのある家族

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稔と獄中結婚をする星野順子

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落書きを淡々と消す清

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それは稔が起こした無差別殺人事件

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保が家を出て行く、彼はこの家庭の異常さを感じていた

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