anttiorbの映画、映像の世界

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あん

2015年作品、河瀬直美監督、樹木希林永瀬正敏内田伽羅出演。

どら焼き屋 「どら春」 の雇われ店長・千太郎(永瀬正敏)は生地の手際は良い。 焼き加減も慣れたもので、常連の女子中学生がいる。
3人組の女の子たちは “せんちゃん” と呼びながらいつも冷やかしに来るが、お土産を渡すとさっさと帰っていく。 しかしそのあと一人で来る女子中学生・ワカナ(内田伽羅)はちょっと事情のありそうな子。 一人で食べに来るだけでなく、できそこないの記事を貰って帰っていく。 お世辞にも繁盛しているとは言えない店だった。 なによりも一人でマイペースでできている店だった。
そんなある日、求人募集の張り紙を見た徳江(樹木希林)といいう年配の女性が現れる。 それは店の前の桜が満開の日だった。 年齢を聞くと、76歳だと言う徳江に千太郎はとてもじゃないけどといって働くのは無理だと断り、そしてどら焼きを一つ上げて帰ってもらう。 そのやり取りをじっと見ていたのがワカナだった。 彼女もバイトしたいと言うが、高校生になったらなと言われる。
しかしその後、彼女はワカナが帰ったあともう一回やってきた。 そして自分は時給は600円のところ300円で良いと言う。 そして徳江は、自分の作った “あん” を置いて行き、食べてみてほしいというのだった。
その日店が終わった後、蕎麦屋に行くと入口のところにワカナが立っていた。 入りづらそうにしていたので、一緒に入る千太郎。 ここにはワカナが憧れている先輩・陽平(大賀)が働いているのだった。
そしてなにげなくワカナにあれからもう一回、徳江が来たことを話し、彼女が持って来たあんが、物凄く美味かったことを話した。 ワカナは雇ってあげればいいのにとポツリと言う。
そして次の日も来た徳江に対して、千太郎は彼女のあんが美味しかったことを言う。そして彼女にあんを作ってもらう事にした千太郎だったが、徳江は逆に千太郎の使っているあんが市販のもので、彼があん作りをしていないことにびっくりしてしまうのだった。
そして一からあん作りを次の日からすることにした二人は、夜明け前から作業を始めるのだった。 小豆を煮るところから始めるあん作り、千太郎は仰天するが、そのしっかりした作業に千太郎は徳江に対して尊敬を抱くのだった。
そして徳江の作ったあんは大反響を見せるのだったが…

この作品、公開時に見たかったんですが、どうしてもタイミングが合わず断念して、いつか放送されるのを待っていましたが、ギンレイにかかりました。 昨日書いた 「恋人たち」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14017126.html との2本立て、初回から立ち見が出るほど大盛況でした。 納得の大入りでしたね。
ボロボロ泣けましたし、憤りも感じました。 しかし今作で大きく取り上げられているのはハンセン病ですね。 私はハンセン氏病と習っていましたが、通称=らい病。 癩菌というの感染により発症する病で昔からあったとされています。
歴史上の人物では、大谷吉継がそうであったとされていて、石田光成が、彼が飲んだ茶碗で、光成も飲んで、関が原ではそんな男気に惚れて、吉継が嫌われ者の光成に加担したというお話は有名ですね。 それだけ忌み嫌われる病気だったという事です。
何が怖いかと言うと、今でこそそうはならないようですが、皮膚に重度の病変が生じることですね。 ですから症状が進んだ患者に対して恐れを抱く、感染を警戒するというんですね。
でも、今はもうよほど発症して放置していない限り、そうなることはありませんし、感染率が極度に低い病気だという事です。 「0ではないじゃないか」 という事も言えますが、発症した患者さんたちは、隔離施設に入れられていたんですね。
と言うか今でもあるんでしょうか? 作品中は今でもそういう療養所=コロニーがあると触れていますが、年々限りなく発症している患者さんの数こそほとんど0に近くなっていますが、医療体制が確立される以前の患者さんたち(もう高齢になっているんでしょうが)は、まだ生きておられるんでしょうね。
物語は、そんな病に子供のころになってしまった女性・徳江さんと、ある事情から小さなどら焼き屋を営んでいる千太郎の出会い、そして徳江さんがあんを作り少しの間大繁盛するお話です。
でも人の噂はあっという間、そしてどうやらその噂を話してしまったのが、身近な人物なのではという悲しい側面もあるんですね。
あん作りが事細かに語られていますね。 私はこしあん派なんですが(^^)こういうじっくり作った物でしたらさぞかし美味しい粒あんなんでしょう。 余談ですが、うちの息子はあんこが食べれません。 彼の唯一の苦手な物なんですが、私は疲れた時にけっこう食べますが。
お店は、繁盛した後、あっという間に閑古鳥が鳴きます。 そして徳江さんは消えていくんですが、ワカナと千太郎はそこ で初めて彼女の生きてきた世界を知るんですね。
ここはもう涙が止まりませんでした。 そしてお別れを言う時の徳江さん(その時点ではワカナも千太郎も気が付いていませんでしたが)もう声をあげそうになりました。
さらに追い打ちをかけるようなことが千太郎に起こるんですが。
これは昨年見ていたら、邦画の最高作品でしたね。 ただ名作と言うだけでなく、事実を伝えるのがいかに難しいのか? いったんついてしまった先入観は、時がたってもなかなか人間の認識からはがすのは大変なのだという事を強く感じた作品でした。(G)

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千太郎が営むどら春

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そこに自分のあんを持って現れた徳江

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常連のワカナは徳江のあることに気がつく

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そして“らい”について調べる二人

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消えた徳江を探すふたり

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そこにはある現実が

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