2015年作品、サイモン・カーティス監督、ヘレン・ミレン主演。
1998年、ロサンゼルス。 マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、小さなブティックを切り盛りしながら、夫亡きあとも一人で溌剌と暮らしていた。そんなある日、ユダヤ人として波乱の人生を共にした姉のルイーゼが亡くなり、彼女が故郷のオーストリア政府にナチスに没収された絵画の返還を求めようとしていたことを知る。
法が改定され、近々過去の訴えの再審理が行われるのだ。 姉の遺志を継ぐと決めたマリアは、友人の息子で弁護士のランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)に相談を持ちかける。 彼は一度独立したがうまくいかず、妻パム(ケイティ・ホームズ)と赤ん坊を養うために再び雇われの身となっていた。
しかしランディは、まだ事務所に勤め始めたばかりなので、この件をやっていいかどうか会社にお伺いを立てるのだった。 彼の仕事ぶりを見るため、許可が出て、彼はオーストリアに行けることになる。
しかし、マリアは、家族や全てを奪われ友人を殺された国に二度と戻る気にはなかなかなれなかった。 問題の絵画はベルベデーレ美術館が所蔵するクリムトの名画で、モデルになったマリアの伯母アデーレが遺言で寄贈したとされているが、マリアも姉も遺言書など見たこともなかった。
マリアは懐かしい伯母の姿をその夜思い浮かべ、その日の深夜にランディにオーストリア行の連絡を入れる。
ウィーンに着き、かつての自分の家の前に佇み、偉大なアーティストや 音楽家、作家たちが出入りした日々をマリアは懐かしむ。 その時、ジャーナリストのフベルトゥス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)が二人の手伝いをしたいと声を掛ける。 政府は国のイメージアップとして返還を持ち出したが、重要な美術品は手放さないはずだというのだ。 その後、美術館を訪れたマリアは伯母が描かれた絵画との再会を果たし、当時を思い出す。
それは、まだ戦争がはげしくなかったころの懐かしい、華やかな思い出の数々だった…
先日観た「ミケランジェロ・プロジェクト」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13640884.html もそうですが、ナチスは、たくさんの美術品を収奪したんですね。 完全に焼失して無くなった物、なんとか持ち主の元に帰った物、今回の物は、ナチスの手から離れたんですが、元の個人の持ち主には戻らず、国家が所有してしまった名画のお話です。
でも、ここに亡き絵画のモデルの伯母の、遺言書の存在がネックとなってくるんですね。 そしてまずは、その遺言書が本当にあるのか? そのためにウィーンに二人が渡っていくんですね。
しかし主人公のマリアは、なかなか腰が重いんですね。 最愛の伯母の絵を取り戻したくないのか? しかしそこには、彼女の過酷なオーストリアでの、ユダヤ人差別、そして決死の逃亡劇があったんですね。 そしてもう一つ彼女の心に大きく影を作っていたある思いも…
ヘレン・ミレン演じるマリアはさすがですね。 モデルの女性よりはちょっと若い感じなんですが、気骨ある婦人の雰囲気をよく出していました。
そしてランディ、ライアン・レイノルズが演じていますが、アクション作品でない弁護士役なんで、ちょっと体を持て余していたかな? というところもありましたが、彼を支えるケイティ・ホームズ演じるパムが健気でしたね。
歴史的な事実ですから結末はわかりますが、正当な裁判、そして国家に訴えていく真摯な姿は、なかなか面白かったですね。 ナチスが個人から奪ったものは、道義的にも持ち主、遺族のところに戻すべきですからね。