美雪の付き人の倉田加代子(マイコ)は足が不自由だが、彼女にぴったりと着いているので、セリフも立ち位置も覚えている。 ある場面の稽古の時、伊右衛門がお岩を足蹴にするシーンがあった。 そこで浩介は、本当に美雪を足で蹴ってしまう。 腰を痛めた美雪は、しばらく控室で休むことになってしまう。 そこで加代子が代役になり稽古が進む。 しかし浩介は、加代子にまでちょっかいを出そうとするが、そのシーンを見雪は見のがさなかった。
二人は一緒に泊まった日は、浩介の車で稽古場に入るときがある。 途中工事中で片側通行になっているところがあり、無人信号機で待っているとき、向こうから若い家族連れが歩いてきた。 その幸せそうな姿を見たとき、美雪はあることを言う。 「子供がいたら幸せになるんだろうか?」 しかし浩介はあいまいな答えを返すだけだった。
稽古は進んでいくのだが、そんな中休みの日があった。 久しぶりに二人ゆっくり過ごせると思った美雪だが、浩介はその日伊豆に呼ばれているという。 早く帰れたらというこの日もあいまいな答えだった。
舞台に集った俳優陣が、稽古と日常のはざまで、それぞれの想いが募っていく。 二つの世界で裏切りを知った “叶わぬ想い” は現実と舞台をオーバーラップし、やがて一つの怨念となり、膨れ上げる。 彼らを待ち受けるのは愛の成就か、それとも残酷な闇か・・・
三池監督、市川海老蔵のコンビは「一命」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/8519072.html が強く印象に残っていますが、今回は現代の怪談になっています。 ただ単に、四谷怪談を撮るのではなく、劇中劇として、演じる俳優と、“四谷怪談” の背景がだんだんオーバーラップしていくところが、面白い作りですね。
舞台なので、赤ん坊は人形を使い、鳴き声は音響を効果的に入れて作るんですが、出てくる生き人形はちょっと不気味で、私はそのシーンが一番怖かったです。
こういうちょっと女にだらしない男も結構似合う市川海老蔵ですが、そこまで悪い男という感じはこの作品からは受けませんでした。 というか、売れない役者が逆玉になれば、これくらいにはなりますよね。 どちらかというと、相手が悪かったという感じですね。
そして、たまたま女優としてよりも、女としての幸せを考え始めている美雪、よくある男と女のギャップが、タイミング悪く “四谷怪談” の舞台で悪化して行ってしまう感じでした。
伊藤英明も結構重要な役で起用されていますが、監督とのコンビで記憶に新しいのは 「悪の教典」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/7709318.html ですが、実際の役者としては子悪党で、舞台の役は、ちょっと本人と解らない宅悦という、怪しい按摩でしたね。
94分という短い尺ですが、ちょっとした現実部分との境目の付け方が面白いのと、どんでん返しのエンディングは現代怪談らしかったですね。
稽古はここから始まる
そして衣装になったお岩役の美雪
腰を痛めた美雪のところに来る鈴木
だんだん心の闇が大きくなっていく美雪
そしてだんだん倒錯の世界へ
そしてとうとう・・・