anttiorbの映画、映像の世界

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ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-

2011年作品、アンドレア・セグレ監督、チャオ・タオ、ラデ・シェルベッジア出演。

ローマの地で働く中国人女性・シュン・リー(チャオ・タオ)、工場で洋服を作る仕事だが、上司から呼ばれた。 新しい職場に移ってほしいとのことだった。 
次の地はラグーナ(潟)に浮かぶ美しい漁師町、キオッジャ。 ここは “小さなヴェニス”と呼ばれ、町を流れる運河には昔ながらの建物が並び、海にはたくさんの漁船が停泊している。
宿泊地に丸一日かけてきた彼女は、早速部屋に荷物を置き、今度の仕事の説明を受ける。 同部屋は同じ中国人の女性だった。 今まで工場で働いていた彼女は、、あまりイタリア語を流暢に話せない。 でも今度は、パラディーソ(天国)という名の小さな酒場“オステリア”だった。
ここはツケで飲む客が多い。 一応だれがどれだけつけているかを書いたノートを渡されたが、始めは顔と名前が一致しない。 しかし来る男たちはそんなリーに対し親しみを持つのである。
リーはなぜこんな地に一人で働いているのだろうか? それは借金を返すためのようだった。 祖国の実家に子供を預け、返し終わるまで労働は続くし、言われたところで働くという条件だった。
キオッジャは漁師町なので、男たちは毎晩ここに集い、ビリヤードやカードゲームに興じ、本や新聞を読み、酒を酌み交わす。 ここが彼らの心のよりどころなのである。
ユーゴスラビアから30年前に流れてきた男・ベービ(ラデ・シェルベッジア)はもう息子は独立してほかの地に住んでいる。 妻はもういないので一人暮らしの父・ベービを心配して、一緒に住むよう説得にたびたびに来るのだが、ベービはここを離れる事、つまり漁師を辞める事が嫌なのだった。 何不自由なくイタリア語を話せるベービだが、やはり彼の心の中には、自分は外国人という意識があり、ここが気に入っているにもかかわらず孤独も感じているのだった。
そんな二人はいつしかお互いのことを話すようになっていくのだったが…

雨が降ると店の中まで水が入り込んでしまう、ほんとに小ヴェニスというのがぴったりの海辺の町が、この映画の舞台でした。
言われた通りの地で働く中国人女性リー役のチャオ・タオですが、始めは故郷の子供を思うちょっと疲れた母の顔をしているんですが、ちょっと中盤から、一人の女の顔に変わっていきます。
中国人は世界中どこにもいると言われていますが、彼らはあまり現地の人と交わりません。 あくまでも商売上の付き合いにとどめた生き方をしています。 この作品でもそれが色濃く出ていました。 しかしそれは彼らが他の地で生きていく一つの方法なんですね。
ここ小ヴェニスでも、一定以上親密になると、つまらない中傷をする男はやはり現地の男でした。 優しい初老の男ベービを演じるラデ・シェルベッジアはちょっとムサイ風貌ですが、その髭の奥にやさしい男の顔があります。
リーだけでなくみんな知っているのですが、やはり異国の者と交わることが彼らを悲しくしていきます。 派手な作品ではありませんが、ちょっとイタリアの海の匂いが感じられるような少し儚い作品でした。(G)

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ここが第二の故郷になったベービと、友人のコッペ





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友の定年祝い、リーも加わる

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だんだん親しみを持つ二人

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そして彼女を舟に乗せ

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海の家に

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