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一命

2011年作品、三池崇史監督、市川海老蔵主演。


井伊家に一人の浪人がお目通りを申し述べている。 井伊家は徳川譜代の名門であり、戦国の世の終わった今、徳川をしっかり支えるべき家柄であった。
浪人の名は津雲半四郎(市川海老蔵)。 彼の願いは庭先で切腹させてほしいということであった。 津雲は元福島家の家臣であった。 しかし元来外様であった福島家は、幕府の巧みな工作により取り潰しの憂き目にあっていた。
地位を失った浪人の中にある現象が起きていた。 それは仕事も家もなくし生活に困った浪人たちの間で流行っていた“狂言切腹”というものだった。
家老・斎藤勘解由(役所広司)が直々に会って、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(瑛太)の事を知っているかと津雲に尋ねるのであった。 千々岩は津雲と同じ福島家に仕えていたので聞いたのであったが、津雲は知らぬと答える。 そして斎藤はその狂言切腹の顛末を語り始める。
千々岩は今の津雲と同じように、切腹させてほしいと願い出てきた。 しかし沢潟彦九郎(青木崇高)という侍が、今世に狂言切腹が流行っていると諫言する。 切腹する気もないくせに、切腹させてほしいと言い、同情や、勇気をほめられ、士官が叶うこともあると言うのだった。
沢潟は品格の高い井伊家にとってはそんな対応をしてはならんという。 望み通り切腹させるべきと言い張るのだった。 そして湯を取らし、持っていた脇差を見ると、なんとそれは竹光だった。 よもや狂言に間違いないと判断した井伊家の面々は、あえて竹光で切腹させるのだった
。しかし千々岩は急に暇乞いをする。 「1日待ってほしい」 「3両貸してほしい」支離滅裂なことを言う千々岩に斎藤も、この場で腹を召せと言う。 もはやこれまでと悟った千々岩はものすごい形相で竹光で腹を何度も突き立てるのだった。 あまりの惨たらしさに斎藤自ら介錯をせざるを得なかった。
そう話すと、津雲はそれがしはそんなことをする気は毛頭ないと言い、庭に通されるのだったが…

いやー何ともすごい三池ワルードですね。 世間を騒がしてやんちゃ者の市川海老蔵ですが、さすがに演技力は凄いものを持っていますね。 実際の年齢より結構老け役なんですが、ほとんど違和感がありませんでしたし、自分より年上にも感じさせる演技でした。
もうこのころには、戦国の世を知っている武士が少なくなってきていますが、まだ福島家が取り潰されてわずかの間なので、まだ気骨のあるものがいたんでしょう。
でももう世の中が、完全に勝者と敗者がはっきりなされており、もう汚いことでもしない限り敗者から這い上がることなぞできないんでしょう。
不器用にまっすぐ生きている千々岩や津雲にとっては、悲しいかな遅かれ早かれの運命だったのかもしれません。 でも最後に竹光で意地を見せつけるあたり、あっぱれな武士としての散り際の様な気がしました。
不憫なのは満島ひかり演じる美穂と赤ん坊ですね。 男はそれでいいのですが、女子供は不憫ですね。 それが最後の津雲の叫びに繋がっていくんですね。
名もない武士の最期の雄たけびが伝わってくる心に刺さる作品でした。(Ka)

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井伊家に切腹を申し出る浪人

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家老・斎藤勘解由は彼にあることを訪ねる

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それは同じ福島犯の浪人の事だった

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ふたりは同郷で仲が良かった

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しかし千々岩の刀が竹光という事で、一変する

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惨めな最期の千々岩の仇を

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