2017年作品、クロエ・ジャオ監督、ブレイディ・ジャンドロー ティム・ジャンドロー リリー・ジャンドロー キャット・クリフォード出演。
ブレイディ(ブレイディ・ジャンドロー)は頭の傷を鏡で確認していた。 ブレイディは、頭のホチキスの芯を抜くと、入院中会えなかった愛馬ガスに会いに行き、優しく語りかける。 するとそこへ、父親のティム(ティム・ジャンドロー)が帰宅し、息子の無事を喜んだ。
ブレイディは、カウボーイであり、暴れ馬に跨り観客を魅了するロデオのライダーであった。 ティムには、ロデオ大会に出場することを止められていたが、ブレイディは暴れ馬から落馬し、頭を踏みつけられ大怪我を負っていた。 ブレイディは入院中であったが、病院でじっと入院していることができず、勝手に退院してきた。
次の朝、ブレイディは家族と朝食をとっていた。妹のリリー(リリー・ジャンドロー)は障害があり、15歳にしては幼稚でブラジャーをつけるのを嫌っていた。 しかし、ブレイディはそんな妹を大切に思い、心から可愛がっていた。 ブレイディとリリーには母親おらず、先に亡くなってしまっていた。 ブレイディは母親の墓を訪れ、小さな馬の人形を拾い上げた。 その時ブレイディの右手の力が勝手に入り、自分の意思では手を広げることができなくなった。 ブレイディは落馬の怪我の後遺症に苦しんでいたのである。
そんなある日、ブレイディの退院を聞きつけたカウボーイ仲間達がやってきた。 ブレイディに、怪我が治ったらまた一緒にロデオをやろうと励ました。 もちろんブレイディも、ロデオを辞める気はなく、怪我が治ったらロデオ大会に出ようと考えていた。 また、そこで仲間達はレイン(レイン・スコット)という仲間のことを語りあい、またレインがロデオをできるように願った。
仲間達に励まされたブレイディであったが、やはり怪我で馬に乗れないことを苦しんでいた。 毎日無気力にだらだらと生活していたが、頭の傷もだいぶ良くなったので、ブレイディはレインのお見舞いに行くことにした。 病室に入るとレインがいた。 レインは車椅子に座り、全身を小刻みに動かしていた。 レインは凄腕のブルライダーであったが、猛牛から振り落とされたことで怪我を負い、話すことも身体を正常に動かすこともできなくなってしまった。 ブレイディの憧れで兄のような存在であったレインは、もう二度とロデオができない体になっていたのである。
ブレイディはレインに優しく語りかけた。 かろうじて手話で意思疎通を図ることはできるが、普通の会話もままならない。 ブレイディはロデオを続けたら自分もこうなってしまうのではないかと恐怖を感じていた。
これは名作にはいる作品だと思います。
監督はクロエ・ジャオ、今年のオスカーの筆頭候補「ノマドランド」の監督ですが、実は今作もものすごく素晴らしいです。
主演はブレイディ・ジャンドロー、本人自身が自伝的に演じています。 そして他の出演者もほぼ本人役で出演しているんですね。
物語は頭の傷を確認するブレイディの姿から始まります。 痛々しいホチキスの芯を抜くブレイディ、本当はまだまだ安静にしているべきですが。 しかし家族は彼の帰りを喜びます。
ブレイディはまたロデオをする気はありました。 ただ後遺症がある事に気づき、悩み始めます。 そして尋ねた先はレインのところでした。 彼はブレイディとは比べられないほどの怪我をして、体を全く動かせない状態になっていました。
障碍のある妹、しかし周りは復帰を期待しています。 思い悩む彼は、やはりガスのところに、そして馬たちのところに行きます。
今作は、地味なお話ですが、見ていてどんどん引き込まれていく秀作、いや名作ですね。 本人の自伝的に本人たちが演じているんですが、生々しくもあり、リアルなのはいうまでもなく、心の葛藤がストレートに伝わってきます。 そしてラストシーン、彼の選択に誰もが文句を言えない、そんな余韻がありました。
この作品があって、「ノマドランド」がある、そんな名監督になる存在ではないでしょうか?