anttiorbの映画、映像の世界

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2017年作品、河瀬直美監督、水崎綾女主演。

視覚障害者向けに映画の音声ガイドを制作している美佐子(水崎綾女)は、ある作品に取り組んでいた。 監督・主演の北林(藤竜也)は作品中、重三という役をしていたが、抽象的な中での男女の関係を描いている作品だった。
美佐子は、町でのあらゆる状況にガイドをして、目の不自由な方だったらどう話せば理解できるのかを心がけて取り組んでした。 ヒロイン役の智子(神野三鈴)は作品の中で時枝を演じているが、この音声ガイドの仕事では美佐子の上司だった。
家で作業をしていると、母親(白川和子)からFAXが絶え間なく届く。 彼女の母は父が蒸発してから、だんだんと痴呆が進んできていた。 FAXの最後に会いたいという言葉を見つけ、美佐子は久しぶりに母に会いに行く。 近所の人に身の回りの世話をお願いしているが、そろそろ施設に入れることも考えた方がいいのではと諭されるのだった。
そんな中、視覚障碍者の方・数人にモニターになってもらい、彼女が考えたガイドを当てて映画を味わってもらう場が設けられていた。 智子の夫・明俊(小市慢太郎)ら数人が忌憚なく意見を言う。 その中の一人、弱視の天才カメラマン・雅哉(永瀬正敏)の意見は美佐子にとってはストレートなキツイ意見だった。それはラストシーンのガイドに対して、押しつけがましいのではという痛烈なものだった。
美佐子は、北林の意見も聞きに行く。 しかし彼は断定的な言い方を避け、逆に美佐子の考えを聞くのだった。 そして美佐子は、今度はラストシーンは逆にあっさりとガイドをカットする。 しかしそれは逆に彼は逃げたのではと抉ってくるのだった。
雅哉の無愛想でぶしつけな言い方に、逆に想像力が欠如しているのは雅哉の方ではと思わず反論をしてしまう美佐子だった。
しかし、彼が過去に撮影した夕日の写真を見て、彼女は心を突き動かされる。 彼女は雅哉が全盲だと思っていたが、雅哉はほんのわずかに見えるのだった。 しかし視力はどんどん衰えどんどん見える範囲、力が失われていくことに怒りと悲しみ、焦りを感じてもいるのだった。
そして何よりも彼は愛用のカメラを決して手放そうとはしないのだった…

河瀬監督といえば、なんと言っても前作の 「あん」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14019573.html ですね。 これはいずれ “名作” となっていくだろうという作品だと思いました。
そんな中、新作が公開され、カンヌ出品作となっていました。 パルムドール受賞は叶いませんでしたが、そんな事はどうでもいい、良い映画はやはりいい映画なんだと、感じる作品でしたね。 やはりこの監督の映画は心に突き刺さります。
今作の主演は水崎綾女、近作は 「ReLIFE リライフ」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14872208.html でしたがこれは出番はほんの少し、こういう作品で主演というのは初めてでは。 
そして今作でのもう一人の主な役は永瀬正敏ですね。 天才カメラマンの彼の写真は物凄く、彼の部屋はその写真で埋め尽くされています。 しかし視力はどんどん失われ、カメラマンとしてはもう仕事はあまりできていない感じで、それでもできる仕事をこなしている感じなんですね。
後輩カメラマン二人から誘われ、不自由ながら飲みに行くシーンがあるんですね。 ここは今作で一番つらい場面でした。 露骨に彼の眼の状態を聞いてくる後輩たち、それは暗にもうやめろと言っているんですね。 そしてこの後彼は帰りに吐しゃ物に足を滑らせ、いつも持っているカメラを奪われてしまいます。
でも彼はカメラを持って行った人間がわかっているんですね。 そして汚れた服をトイレで洗って取り戻しに行きます。 ここが一番きついシーンでした。
そんな中、美佐子と雅哉はぶつかりながら近づいて行く。
最近バリアフリー作品が作られるようになり、先日は聴覚障碍者用に作られた、邦画の字幕版を 「PARKS パークス」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14900117.html という作品で鑑賞しましたが、視覚障碍者のために音声ガイドを付ける作業の難しさ、大変さを感じ取れる作品でもありました。 目が見えない方たちにも映画の良さを何とか味あわせたいという作業がいかに大変で尊いのか? それを感じ取れる作品でした。
カンヌで拍手が10分間鳴りやまなかった、頷ける作品でしたね。

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音声ガイドの仕事をしている美佐子

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智子の指導の下

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辛らつな意見を言うモニターの雅哉

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彼は弱視のカメラマンだった

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そして二人はだんだん理解し合っていく

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