いつものやり取りでおかしなところは全く感じなかった拓郎は、休日で釣りの準備をしていた。 いつものコースで、いつもの帰宅時間の予定だったが、ふと彼は手紙のことが気になり、早めに切り上げて家に帰ってきた。 そしてそこでは妻が浮気相手(中丸新将)と情事の真っ最中だった。
不倫の現場を目の当たりにした彼は、激しい怒りに駆られ、包丁を持ち出し、浮気相手を一刺し、そして妻をめった刺しにして殺してしまう。 浮気相手が逃げて行った後、彼は自転車に乗り警察に自首をしに行くのだった。
それから8年、刑務所を仮出所した山下は、出所すると同時に、昔自分が飼っていたうなぎを職員(平泉成)から手渡される。 千葉県佐倉市の住職・中島(常田富士男)が保護司となり、中島の妻・美佐子(倍賞美津子)に挨拶をし、しばらくここで寝泊まりをすることになる。
そして持って来たうなぎも一緒だった。 どうしてうなぎを飼っているのかと聞かれると、口を利かないし、自分の話を聞いてくれるからと答える拓郎だった。
そして、中島に利根川の河辺に連れて行ってもらい、今はだれも住んでいない理髪店を下見に行く。 前の主人が夜逃げをしてそれっきりの廃屋、しかしここで刑務所で覚えた腕を生かして理髪店を開業することに彼はするのだった。
人間不信に陥っていた彼は、仮釈放中にトラブルを起こしてはならないこともあって近所づきあいもせず、飼っているうなぎを唯一の話し相手に、静かな自戒の日々を送ることになった。
ところがある日、うなぎの餌を採りに行った河原で、山下は多量の睡眠薬を飲んで倒れている女性(清水美砂)を発見した。 しかしすぐに通報せず、隣家の船大工の高田重吉(佐藤允)を呼んでから警察に知らせるという、慎重な態度を取るのだった。
服部桂子というその女性は、山下によって命を救われるが、山下は 「東京に帰りたくない」 と言う彼女を 店で使うよう、中島の妻・美佐子に押し切られてしまう。
中島たちの願いを断れない山下は、彼女と二人で店をすることになるのだったが…
私が見たのは完全版で、劇場公開版より17分長くなっているとのことです。 劇場版を見ていないのでどこが足されているかはわかりませんが。 原作は吉村昭の 「闇にひらめく」 という事らしいですね。
監督は今村昌平、記事にしている作品 「黒い雨」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13514976.html ですが、昔見た作品も数本監督作はありますし、もうちょっと見直したりしたい監督ですね。
そして清水美砂、記事にした作品は 「姑獲鳥の夏」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/1042739.html 「シコふんじゃった。」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/12434900.html 「人間椅子」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/1661535.html 「未来の思い出」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13749697.html などなど。
こういう作品だったんだ!という冒頭の惨殺シーンですね。 主人公の山下拓郎からは想像できない、いきなりの怒りからの惨殺シーンは、この全体感からここだけ浮き彫りになるほどですね。
しかし、その後すぐに誠実に警察に行く拓郎、うなぎを飼ったり、模範囚なのに仮釈放が遅れたり、実は彼は妻を殺したことに対して、反省をしていないから情状酌量が受けられなかったことがわかりますし、そのため妻の家族からは絶縁され、(当たり前ですが) 墓にも行っていないんですね。
しかし、彼の中にはどうしていきなり殺してしまったのか? もしかしたら本人もわからない感情があったのかもしれ ません。
利根川沿いの生活は冒頭とは全く無縁のような長閑な生活に見えるんですが、そこに現れたのは桂子でした。 彼がすぐに通報するのをしなかったのは、仮釈放中なことと、亡き妻にどことなく似ていたからだったという事ですね。
今作、原作の題名が当初ついていたんですが、製作発表の時に今村監督がいきなり改題したという有名な逸話があります。 しかしそれがパルム・ドール受賞にまで行ったのかもしれませんね(^^)
仮釈放となり
理髪店を開くが
釣りばかりしていたところ
彼女を発見する
はじめは拒んでいた彼女の店の手伝いだったが
しかし彼女が騒動を巻き起こしていく