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汚れたミルク/あるセールスマンの告発 カーリド・アブダッラー

2014年作品、ダニス・タノヴィッチ監督、イムラン・ハシュミ主演。

ある部屋の一室に集まっている数人の男女、ネット画面にある男が映っている。 彼はパキスタンで国産製薬会社に勤めていたアヤン(イムラン・ハシュミ)だった。 彼の告白を聞くために皆集まっているのだった。
国産製薬会社の薬はパキスタン国内ではなかなか使われない。 それはネームバリューのある多国籍企業の薬を、病院も、医師も使いたがるからだった。 じゃあ転職すればいいのでは? しかしそう簡単に転職はできない、大学をまず出ていないと。
彼は少し前に結婚をした。 美しい妻・ザイナブ(ギータンジャリ)との結婚式を終え、今後は一家を養っていかないとならない立場になった。 妻の勧めで多国籍企業の営業募集を知り、大手グローバル企業に面接を受けに行く。
面接官との面接で、彼は今まで国産製薬会社の営業をしていたといい、多くの医師と顔なじみとうそぶく。 しかしビラル(アリル・フセイン)のカマをかけた質問にうっかり答えてしまい、失敗してしまうのだが、どうしてもそのやり方に我慢がならなかったアヤンは、自分のことを強烈に彼に印象付けに行くのだった。
そしてそれが効いたのか、彼は就職する。 そして彼はラスタ社の営業マンとしてさっそくビラルから説明と、心構えを伝授される。 「諸君が売り込むのは世界最高の粉ミルクだ!」 赤ん坊の粉ミルクを手に、病院を行き来する毎日。 アヤンはついに、大手グローバル企業のトップセールスマンになる。
始めに懇意になったのがナディーム(カーリド・アブダッラー)という若い医師だった。 彼がクリケット好きなことを知ったアヤンは、病院を抜け出しクリケットを楽しむ仲となる。 彼との仲が良くなるにつれて、他の医師ともどんどん親しくなり、ついには軍関係の病院にまで入り込むことに成功する。
子供も生まれ順調な営業が続く中、ナディームが転勤となってしまう。 カラチに行くという彼の転勤はアヤンは少しさびしく感じるのだった。
2年後ナディームは戻ってきた。 しかし彼の表情はさえなかった。 カラチで何かあったのか? そこで彼が見せてくれたものは、衰え切って脱水症状を起こした乳幼児の姿だった。
パキスタン全域でで粉ミルクを強引に販売したことによって、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児が死亡する事件が起きたのだ。 下痢が止まらず脱水症状を起こす。 さらに貧しい親は粉ミルクを適量以下の薄さで乳児に飲ませるので、栄養も不足がちになってしまうからだった。
その事実を知っていながら、責任放棄をする企業。 自らが販売した商品が子どもたちの命を奪っている事に心を痛めたアヤンは、たった一人で世界最大企業を訴えようとするのだが…

題名の汚れたミルクというのは、何かのたとえかと思いましたが、そのものズバリの内容でした。 ただ正確にはちょっと違うニュアンスなんですが。
監督はダニス・タノヴィッチ、旧ユーゴ出身の監督で、大注目のようですね。 過去作も見たいところですが、実は連続してもう1本公開予定になっております。
今作の主演はイムラン・ハシュミ、インド出身で、パキスタンと両国で活躍しているようですが、私は初めて見ました。 明るい役での彼も見て見たいもんですが。 そして妻のザイナブ役のギータンジャリが、なんとも美しい。 彼女も初めて見ましたが映画出演4作目という事みたいですね。
物語はアヤンの独白をネットを通じて行われることから始まります。 こちらで彼の映像を見ているのは、映画製作のスタッフなんですね。 彼の告白を映画化するかどうか、そういう視点での作品なんですね。
始め彼は結婚というある意味のろけ話から始めます。 指摘を受けますが、結婚を境にして彼が数奇な運命を歩み始めることから、これは避けては通れないところなんですね。 こういう幸せな時間もあったと彼は言います。
セールスマンとして彼は優秀だったんですね。 もし粉ミルクを売っていなかったら?彼は成功を遂げて出世していたでしょう。 しかし自分の売っている粉ミルクのせいで、多くの乳幼児が亡くなっている現実に直面して、彼はすぐに会社に辞表を提出、元の仕事に戻りますが、今まで売るために賄賂同然の付け届けをしていたことが発覚、そしてとうとう大きな告発をWHOと協力して行っていくことになります。
ドイツのテレビ局がまず食いついてきました。 始めは相手にしなかったWHOの職員も、超A級の内部告発であることから、多方面にこれを知らせ、ドイツが反応したんですね。
しかし実はこの試みは直前でとん挫します。 そこには彼の家族の身を案じる苦悩が存在するんですね。
どうして粉ミルクを飲むことで、乳幼児の死亡が多くなっていくのか? まずはその売り方に問題があり、さらにそれでミルクを作る若い母親の問題、貧困、売っている企業が国際的大企業というネームバリューがあること、こういう複雑な背景が重なった悲劇であることがわかってきます。
粉ミルク自体毒ではありません。 しかし使用方法を間違うと、大きな問題を引き起こしてしまう。
この世界的企業はどこなのか? 作品中にもほんの少し触れられていますが、はたしてその企業は1社だけなのか? 根深い問題は今も続いているようですね。

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彼らの前の画像に一人の男が映っている

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その男は美しい妻と結婚した

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娘も生まれ大手企業に就職したアヤン

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粉ミルクを売るアヤンだが

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しかし、重大な問題に気がつき退職、上司が威圧に来る

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危険な状態になった家族を非難させる

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