十数年後、先進諸国からテロの脅威が除かれた一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が横行するようになっていた。 事態を重く見たアメリカは新たに情報軍を創設し、各国の情報収集と戦争犯罪人の暗殺を行うようになった。
アメリカ情報軍に所属するクラヴィス・シェパード大尉(中村悠一)は、後進国で虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポール(櫻井孝宏)の暗殺を命令され、相棒のウィリアムズら特殊検索群i分遣隊と共にジョン・ポールの目撃情報のあるチェコ・プラハに潜入する。
プラハに潜入したクラヴィスは、ジョン・ポールと交際関係にあったルツィア・シュクロウプ(小林沙苗)の監視を行うために、彼女からチェコ語を習うという名目で彼女に近づくことに成功する。 そして彼女の流暢な英語をほめた時に、彼女の方からMITにいた事を聞きだし、おそらくそこでジョンとあったことがわかるのだった。
彼女の部屋が真正面に見えるところに、同僚のウィリアムズ(三上哲)と部屋を借り、絶えず彼女を監視している。
そんなある日、クラヴィスはルツィアにクラブに誘われ、そこで政府の情報管理から外れた生活を送るルーシャス(桐本拓哉)たちと出会った。 いまどき、ノーチェックで入れ、酒を飲めるところはアメリカにはない。 ルーシャスはそこがヨーロッパがアメリカとは違うところだと説明し、そういう自由な雰囲気を好む人間の集う場がいくつかあるというのだった。
その帰路で、クラヴィスはジョン・ポールに協力するルーシャスら 「計数されざる者」に襲撃され拘束されてしまう。 拘束されたクラヴィスはジョン・ポールと対面し、彼から 「人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる “虐殺文法” が存在する」 と聞かされる。
ルツィアを監視していたことを暴露されたクラヴィスは、ルーシャスに殺されそうになるが、ウィリアムズら特殊検索群i分遣隊の奇襲によって救出されるも、ジョン・ポールとルツィアは行方不明になってしまう・・・
この作品は、お蔵入りになる危機があったんですね。 制作していたマングローブ社の経営危機、2015年9月29日に破産申請の後、会社清算→解散という事でしたが、チーフプロデューサーである山本幸治が新たに設立する 「ジェノスタジオ」 に制作が引き継がれ、約1年後となる2016年11月、上記のとおり2017年2月に公開することが発表され、ホッとしたのを覚えています。
今作は今は亡き伊藤計劃のデビュー作。 「屍者の帝国」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13517860.html 「ハーモニー」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13648687.html と3作連続公開の予定が、今作が上記の経緯で大幅に遅れましたが、デビュー作で秀逸な原作を埋もれさせてはいけないという熱い思いから、何とか実現までこぎつけましたね。
ただ、映像化にするときに、本当は実写化をしたかったと、関係者に息子は聞いたそうです。 これハリウッドで実写化したら、超話題作になり、物凄い作品になりそうですが。
声の出演で、主人公のクラヴィスに中村悠一、「龍が如く6」 で韓俊基(ハン・ジュンギ) 役をあてています。 ジョン・ポールには櫻井孝宏、「亜人」シリーズ http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13689683.html http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13689683.html http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14454575.html では戸崎優をあてていて、冷静な口調には定評がありますね。
物語は、今作ではサラエボでの核爆弾となっていますが、アメリカを初めてした先進国は、テロの撲滅のため、強力な個人管理社会を構築、時を同じくして後進国は矛先を自国内に向け、内戦が起き始める世界となっていくんですね。
その内戦を鎮圧するためにアメリカが中心となり、虐殺を行う人間を暗殺、内戦鎮圧に乗り出す中、必ずどの内戦勃発国家にある人物がいることを掴む、それが・ジョン・ポールでした。
死神のような男、しかしどうして彼は内戦をいとも簡単に起こせるのか? そしていったい何が動機なのか? ここがこの作品の核心にいたるところで、先日観た 「スノーデン」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14720000.html を先取りしたような、いや作者は何か知っていたのではないか? と思わせられるような不気味さ、リアルさを感じたのは私だけでしょうか?
逆にこれは実写で作ったら、危ない作品なのかもしれません。 そして実際に起こっている世界となんら変わらない、現実はこの作品に沿って起こっているのかもしれない背筋の寒くなる物語でした。