anttiorbの映画、映像の世界

不定期で、旅ブログも立ち上げます!

禁じられた歌声

2014年作品、アブデラマン・シサコ監督、イブラヒム・アメド、アベル・ジャフリ、トゥルゥ・キキ出演。

西アフリカ・マリ共和国のティンブクトゥからそう遠くない街。 キダーン(イブラヒム・アメド)は、妻サティマ(トゥルゥ・キキ)、娘トーヤ、そして12歳の羊飼いイッサンと共に慎ましくも音楽に溢れた幸せな生活を送っていた。
しかしいつしか街はイスラム過激派・ジハーディスト(聖戦戦士)に占拠され、様相を変えてしまう。 過激派は厳格なシャリア(イスラム)法と恐怖政治により住民たちを支配してゆく。 歌や笑い声、たばこ、そしてサッカーさえも御法度となり、やがて住民たちは恐怖に支配されていくのであった。
サッカーボールがある日転がってきた。 サッカー等ご法度なのにサッカーボールが、すぐさま犯人が割り出され、罰を受けるが、少年たちはボールを使わずにサッカーの試合をし、静かに抵抗するのだった。
そして極彩色のドレスを着た気のふれたひとりの女は、身体を張って不条理な暴力に対抗する。 ほかの女たちは影のように潜み、毎日のように悲劇と不条理な懲罰が繰り返される。 そんな混乱を避けるため、キダーン一家はティンブクトゥのテント生活に避難する。
しかし過激派たちの、住民への圧政はより色濃くなっていく。 歌を歌ったという理由だけで女性は鞭打ちの刑に処され、その尊厳は踏みつぶされていく。 神を讃える静かな音楽を奏でただけで、それはむしろ神への冒涜となる。 
そしてまだ愛も知らない少女は、無理やり男の花嫁となっていく。 そして事実婚カップルは公開処刑されるのだった。 
だがある日、漁師のアマドゥが キダーンの飼っていた牛を殺し、それをきっかけに彼らの運命は大きく変わっていく…

監督はアブデラマン・シサコ、日本ではオムニバス作品で上映記録があるようですが、結構多くの作品を発表しています。 なかなか日本では作品が見られない監督のようですね。
主演は圧政から逃れて、少ない自由を求めテント生活をしているキダーン一家、イブラヒム・アメドが主演でしょうか? しかし過激派の中のちょっと変わった存在のアベル・ジャフリ(アブデルグリム)の視点がある意味、物語を進めて行きます。  
ジハーディスト=イスラーム過激派とひっくるめて言いますが、これにはアルカイダも、ISも含まれています。 この作品はどの組織なのかは定かではありませんが、どの組織であっても、こういう民衆に圧制を強いるのは同じなんでしょう。 その一番は今はISなんでしょうね。
同じイスラム教徒であっても、価値観が全く違う。 ある程度の自由はあってもいいという生活をしているこの町、環境こそ違いますが、何ら日本人と違うところはありません。
携帯はあるし、サッカーが好きで、音楽を愛する、当たり前の人間が住んでいる街ですが、違うのは銃を持った組織が絶えずうろついていること。
そしてあらゆることをどんどん禁じていること。
途中夜に数人が家に集まりその中の女性の歌声が綺麗で上手くて美しいんですね。 しかしその女性は捕まり鞭打ちの刑に処せられます。 打たれながら必死に自由を求める歌を歌い続けるシーンは、心に刺さりますね。
違う宗教どうしの争いはまだ理解できますが、同じ宗教の中でも武力を持って押さえつけるものと、虐げられるものが出るのはいかがな物か? そこには政治も何もあったもんじゃない、ただのエゴでしかない不条理が色濃く描かれているだけですね。
ラストも何とも言葉にできない悲劇で終わりますが、根の深い問題を描いた衝撃作でした。

イメージ 1
キダーンは家族テント生活をしている

イメージ 2
イッサンという少年は牛の世話を

イメージ 3
街で抵抗する女

イメージ 4
夜にこっそり歌う市民だが

イメージ 5
しかし圧制は続く

イメージ 6