anttiorbの映画、映像の世界

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終の信託

2012年作品、周防正行監督、草刈民代役所広司出演。
 
検察庁に入っていく折井綾乃(草刈民代)。 3階に行くように言われる彼女。 呼び出したのは塚原透(大沢たかお)という検事だった。 早く着いた彼女は待たされてしまった。 いったいどうして彼女は呼び出されたのか? 彼女は週刊誌に載った医師だった…
塚原は、江木陽子(中村久美)から事情を聞いていた。 陽子は夫の江木秦三(役所広司)の主治医だった。 そして秦三は3年前に亡くなっていた。
秦三は重度の喘息で、折井に掛っていた。 呼吸器では効かず、ステロイド剤の服用を進められていたが、彼は躊躇していた。 
折井は同僚の医師・高井(浅野忠信)と不倫関係にあった。 二人は決まった部屋で情事を重ねていた。 高井はホノルルの学会に行くと言う。 見送りはいらないという高井。
秦三の発作が起きた。 折井の迅速な対応で、落ち着きを取り戻した秦三は彼女にお礼を言う。 丁寧にお礼を言われた折井は、いつでも呼んでくれと彼に言うのだった。
彼女は密かに空港に高井を見送りに行ってしまう。 しかしそこには自分よりずっと若い女と一緒の高井がいた。 ショックに打ちひしがれる折井。 戻ってきた高井に対して、問い詰める折井だが、逆に開き直る高井だった。 結婚するつもりなんかないとまで言われてしまった。 
そしてその夜、疲れたと言って、仮眠室で休みそして睡眠薬を飲みアルコールを摂取した。 そして彼女は危篤状態となってしまったが、看護師が早く気づき、同僚の医師(矢柴俊博)の処置がよく彼女は一命を取り留めた。 高井は捨て台詞を吐きに来た。 彼は大学に戻ることになっていたと言い、冷たくあたるのだった。
復帰した折井に対し、秦三は優しく接する患者だった。 折井がいないときに彼はまた発作が起きたそうであった。 秦三は折井にオペラのCDを渡し6番目の曲がいいと勧める。 それはプッチーニの 「ジャンニ・スキッキ」 の中の1曲 “私のお父さん” であった。 訳を書いた手紙が入っていた。 心が癒される思いがした彼女は、落ち着きを取り戻していくのだった。 そして自然と涙が溢れてきた。 二人はだんだんと距離が近づいて行くのだった…
 
Shall we ダンス?」 以来の監督と主演のふたりの作品です。 前回のコミカルイメージとうって変わった、シリアスな作品です。 辛い立場に陥ってしまった医師折井の草刈に、温かく包み込むような患者である江木演じる役所広司。 
二人は医師と患者という立場を超えることはありませんでした。 しかし何か強い絆をお互い感じていたんでしょう。 でもそれは他人には解らなかったところが悲劇でした。
これも尊厳死安楽死を綴った作品でした。 「眠れる美女」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11231945.html のようなちょっと政治、法律という側面とは違い、男と女の絆という視点と、直球勝負の “殺人か否か?” という面が生々しいですね。
後半の取り調べ部分、大沢たかおがとてつもなく嫌な役で描かれているように見えてしまいますね。 映画を観ているこっち側からすると、二人の信頼関係から、終末医療の現場としては妥当ともいえる処置でしたが、思いのほかの江木の反応が引き金になって事を大きくしてしまいます。 まあそれだけではないような気もしますが。どうして週刊誌がすっぱ抜いたのか? それもしばらくたってから。 どうして彼女は刺されたのか? 最後の江木の断末魔の苦しみは、不可抗力に見えてしまうんですがね。
検事としての厳しい取り調べは、ある程度仕方がない感はあるのですが、殺人の罪に問われる方向に一気に持って行かれるところの不自然さ、私は高井がうしろで…なんて思ってしまいます。
 
脳死状態、植物状態、末期がんの最期、延命治療を望まず、どこかで終わりにしてほしい。 そんな患者本人、家族の選択って難しいですね。 生前によほどはっきりと意思表示をして、それを周りに周知しないとこういう悲劇はまだ起きる感じがします。 
そうしないと病院が敵対したり、遠ざかって引いてしまったりするんではないでしょうか。  長い作品で前半部分は重いです。 そして取調べシーンはきついですが、これも取り上げた問題は多くの考えさせられるテーマを持った作品でした。



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取り調べにあたる塚原

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不倫相手の高井

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そんな時江木を診ることになった折井

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傷ついた彼女に渡した1枚のCD

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心でつながる二人だった

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