ある船頭の話 - anttiorbの映画、映像の世界

2019年作品、オダギリジョー監督、柄本明村上虹郎川島鈴遥伊原剛志出演。

明治後期から大正を思わせる時代、美しい緑豊かな山あいに流れる、とある河。　船頭のトイチ（柄本明）は、川辺の質素な小屋に一人で住み、村と町を繋ぐための河の渡しを生業にしていた。　様々な事情を持つ人たちがトイチの舟に乗ってくる。　日々、黙々と舟を漕ぎ、慎ましく静かな生活を送っていた。
こんな山奥の村にも、文明開化の波が押し寄せていた。　川上では煉瓦造りの大きな橋が建設されている。　村の人々は「橋さえできれば、村と町の行き来は容易になる」「生活しやすくなる」と完成を心待ちにしているが、トイチは内心、複雑な思いでその様子を見守っていた。

トイチのところに頻繁に来るのは薬草を取ったり、ちょっと軽い感じの青年源三（村上虹郎）。　息子のような歳だが、気さくに話している二人で、たまには一緒に飯を食ったりする。
そんな折、トイチの舟に何かがぶつかる。　流れて来たのは一人の少女（川島鈴遥）だった。　トイチは少しの間その子の様子を見てやることにするが、それと同じ頃、トイチは渡し舟の客から、奇妙な惨殺事件の噂を耳にする。　少女はどこからやってきたのか？　どんな過去を背負っているのか？　
少女の存在はトイチの孤独を埋めてくれてはいるが、その一方でトイチの人生を大きく狂わせてゆくことになる…

これは注目作ですね。

監督はオダギリジョー、初監督作品です。　俳優としては「ルームロンダリング」　https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15599786.html　が近作記事になります。

主演は柄本明、「居眠り磐音」　https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15962983.html　が近作ですね。

村上虹郎は源三役でしたが、「チワワちゃん」　https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15843382.html　が近作です。

そして素晴らしい演技と言うか存在感だったのが川島鈴遥、「望郷」　https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15148079.html　に出演していましたし、「ミュージアム -序章-」　https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15477340.html　では人質になった娘役で出演していました。

物語は、まだ日本に自然が残り、文明は地方には波及していない時代。　川には渡しという船頭のいる舟が交通を担っていました。　しかしそんな渡しも今はトイチ一人がやっています。

村の住人には無料で、村の住人はものでお礼をしていますが、外部の人間には5厘で乗せるそんな感じやっています。　慇懃無礼な人間、往診に向かう医者、中には牛を運ぼうとする村人もいます。

そんな時、舟に何かが引っかかります。　なんとそれは人間で若い娘でした。てっきり死体だと思ったトイチでしたが、まだ息がある事がわかると必死に看病します。　そして息を吹き返し、源三の蓬で傷も癒えて行きますが、話そうとしません。　でもトイチの出す食べ物にはむさぼるように食べ始めます。　周りの人間には親類の子を預かっていると言いますが、それはある噂を聞いたから、とっさについた嘘でした。

今作は、ちょっと怖いような部分もある、古き日本と、ファンタジーでもありました。時代から取り残され、たんたんと生きているように見えるトイチ。　どんなことを言われても淡々と応えるトイチですが、ある部分で自分の心の底を吐き出しシーンがあるんですね。　でもこの叫びって、人間誰しも、時代を問わず持っている部分であり、柄本さんの演技の凄いところでした。

ラストはもうちょっと見たくなる、そんな余韻を残すちょっと不思議な物語でした。

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