anttiorbの映画、映像の世界

不定期で、旅ブログも立ち上げます!

負け犬の美学

2017年作品、サミュエル・ジュイ監督、マチュー・カソヴィッツ ソレイマヌ・ムバイエ オリヴィア・メリラティ ビリー・ブラン出演。

ボクシングの試合アナウンスが聞こえ、一人の男が紹介され、リングに上がっていく。 その後、ゴングが鳴り観客が去った中を、彼が静かにリングを降りていく。 今日も敗戦成績を伸ばし、会場の外で黄昏ている男スティーブ(マチュー・カソヴィッツ)。 彼は冴えない戦績ながらなんとか生計を立てている中年ボクサーなのだった。
妻マリオン(オリヴィア・メリラティ)から50戦したら引退するように諭されており、タバコを吸い終わったスティーブが会場内に入ろうとすると、警備員に止められる。 「選手で、荷物を取りに行くだけだ」 とスティーブは説明するが、警備員は 「IDカードを見せろ」 の一点張り。 それでもスティーブは、なんとか知り合いに助けてもらうと、どうにか帰途に着くことができた。
家に帰宅すると、寝ている子どもたちにキスをして布団をかけた後、シャワーを浴びる。 体には生傷が絶えず、顔面は大きく腫れていた。 そのうえ、スティーブがトイレに行くと、血尿までが出ていた。
あくる朝、妻マリオンが顔の手当てをしていると、娘オロール(ビリー・ブラン)が 「試合見に行っていい?」 と何度もせがむが、スティーブはダメだという一点張りだった。 スティーブのファイトマネーだけでは生活ができず、マリオンの美容師としての稼ぎと、スティーブ自身がレストランで働くことで何とか家計を支えていた。
ある日、ボクシングの練習の後にスティーブは、娘オロールが通っていたピアノ教室に迎えにいった。 先生に 「ピアノにできるだけ触れることが一番の上達法です」 と言われ、さらに娘オロールの 「国立高等音楽院に行きたい」 という夢を初めて知る。 ピアノの授業料も滞納し、他の請求書も溜まっていましたが、それでもスティーブはピアノを買うことを決心する。
そんな時、ボクシングの練習場にチャンピオンのタレク(スレイマヌ・ムバイエ)が欧州王座を賭けた試合のために、担当者がスパーリングパートナーを探しにやってくる。 スティーブは全く声もかけられないが、帰りの車を待ち伏せをすると自ら志願した。 担当者に 「ボコボコにされるだけだ」 とスティーブは言われるが、打たれ強いのが自分の良さだと押し通して契約すると、スティーブは良い仕事が決まったと家族とディナーに出掛ける。
しかし、その仕事内容がチャンピオンのスパーリングパートナーだと知ったマリオンに 「試合より危険なスパーリングパートナーはやらないと約束してたしょ!」 と言い返され、猛反対されてしまう。
しかし彼は、マリオンの猛反対を聞き入れず、スパーリングパートナーの仕事に向かうのだった・・・

いやーこれは良かった!
監督はサミュエル・ジュイ、監督デビュー作ですね。
主演はマチュー・カソヴィッツ、「ハッピーエンド」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15454238.html ではトマ役をしていました。 「エージェント・マロリー」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13917937.html にも出ていました。
妻のマリオン役はオリヴィエ・メリラティ、彼女は歌手、作曲家で今作の音楽担当ですね。 日本にも来日歴があるようです。
そしてなんと言っても輝いているのが長女のオロール役のビリー・ブランですね! 日本初登場の彼女、少年のような風貌ですが、実に素晴らしい。 監督が絶賛したのはただ単に可愛いだけでなく、演技にきらっと光るものを誰しも感じるからだと思います。

物語は一人のボクサーのお話。 40歳を過ぎ、もう後何試合できるかわからない、そして戦績も激しく負けが多いスティーブ、そしてあと1試合で50戦目、そこで節目をつけボクシングは終わる事になっているんですね。 ただ、なかなか使ってもらえない、さらに娘の事で彼は大きな彼女の夢を知るんですね。 そのためにはピアノを買いたい、安くても毎日弾ける環境を整えたい。
そんな時ジムに現れたのは、スパーリングパートナーを求めに来たチャンピオンの代理人でした。 もちろん彼なんて眼中にない、若くてタフなボクサーを選びますが、スティーブは帰りに待ち伏せ、打たれ強いこと、今回の挑戦者の癖を知っていること、必死の願いが通り彼は3人のなかの一人になります。
しかし初めてのスパーリングで、あっさりダメだしされます。 でも娘のため、高額ギャラをあきらめられない彼は直談判をして食いつきます。
この作品は、男の生き様、そして父の生き様がぐっと伝わってくる、男なら、父親なら感じるところの多い作品、これは必見ですね。 そしてこの後彼に大きなチャンスが巡ってきます。 個々の役者、そしてタレク役の本物のプロボクサー・スレイマヌ・ムバイエの雰囲気がさすが本物なんですね。
これは超お勧め、特に男なら見るべし。

イメージ 1
父の試合を見たがっているオロール

イメージ 2
しかし彼女の夢を知るスティー

イメージ 3
そして大金を稼ぐチャンスが、しかし猛反対するマリオン

イメージ 4
しかし彼はスパーリングパートナーの仕事を受ける

イメージ 5
それは彼にも大きなチャンスが巡ってくる

イメージ 6
最後の試合が実現する

イメージ 7