神を信じずに生きてきた90歳のラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)は、いつもと変わらない日常を過ごしていた。 一人暮らしのアパートで目覚め、コーヒーを飲み、そのタイマーは12:00となっている。 冷蔵庫のミルクをコップに移し冷えているのを飲み、明日の分をコップに入れまた冷やしておく。
タバコをふかし、いつものカフェに行くと、皮肉屋のマスターが話しかけてくれ、タバコは止めろと怖い顔で言う。
でもウエイトレスの黒人女性は優しく、ちょうど彼女はその時間であがっていく。 次に行くのは小さいコンビニで、そこでは牛乳を買う。 そこの女性店員はメキシコ系、彼女とも仲が良く彼女の孫の写真を見せられる。
夜は、いつものバーでブラッディ・マリアを飲み、馴染みの客たちと過ごす。 そこには親友のハワード(デヴィッド・リンチ)が毎日やって来るが、彼と会うのも楽しみの一つだが、残念なのはこの店が禁煙な事だった。 女性オーナーのーの自慢話を聞かされるが、たばこを吸えない以外は心地いい空間だった。
しかし、そんなある日、コーヒーメーカーの12:00の数字を見ていると、急に体の平衡感覚を失い倒れてしまうラッキー。 不安になって、医者に行き検査をしてもらうが、どこにも異常はないと言われ、ヘビースモーカーだが、癌にもなっていない健康体だと言われる。 却って、ストレスを感じるかもしれないからタバコをやめない方がいいとまで言われるほどだった。
納得できないラッキーは、医師に原因をしつこく尋ねると、それは加齢という事だと言われる。 日々のなかでふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされ、死について考え始めるラッキー。
周りはそんないつもと違うラッキーを心配し始めるのだが・・・
雰囲気としては 「パターソソン」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15111439.html に似ている感じの作品ですね。
監督はジョン・キャロル・リンチ、俳優としての出演作は 「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/15069304.html が近作ですが、監督ははじめてのようですね。
主演はこれが最後の出演作で主演作となったハリー・ディーン・スタントン、昨年9月にお亡くなりになっています。 とにかく多くの出演作が。 「グリーンマイル」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/5827067.html 「ニューヨーク1997」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11610165.html 「エイリアン」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/6726433.html などですね。
そして、デヴィッド・リンチがハワード役で出演、監督作品としては「ブルーベルベット」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14247933.html を記事にしています。
物語は、90歳になった通称ラッキーの毎日のお話です。 私も、リタイヤした後は、こういう規則正しい、毎日の生活になるんでしょうかね? それともそれはもっと先の話なのか?
第2次大戦も戦ったラッキー、彼のその呼び名は、過酷な戦争で無事生き延びたことからつけられたらしいです。 多少偏屈な爺さんですが、それでもみんなに愛されている、ちょっとした皮肉や嫌味ではなく、ユーモアと取られる性格なんでしょう。
しかし突然感じた強烈な老い、それは日常生活でやってきました。
いい味を出しているのは、ハワード役のデヴィッド・リンチですね。 まず彼がバーで気落ちしてやってきます。 相棒のように一緒に暮らしていた陸ガメの “ルーズベルト” がいなくなってしまったと、物凄く落ち込んでいるんですね。
どうやら彼も一人暮らしのようで、なんと彼は弁護士を呼び、ルーズベルトに遺産を相続させようと、遺言書を作ろうとし始めます。
今作は、ハリー・ディーン・スタントンの遺言のような、お別れのような感じになっています。 自分という存在が無くなってしまう恐さ、それは急にやってきます。 病気のような現象ではなく、体が衰えていく、そのじわじわとくる終末に動揺を隠せないラッキー、そんなあからさまな表現と、そして彼なりに人生とは? を考え答えを見つけていく、ラストもこれを見ている君の終末はどうするんだ? そんな問いかけにも見えてくるんですね。
いつもの生活
カフェに行き
スーパーに行き
彼と会う
しかし突然倒れ
人生の終わりを考え始める