2015年作品、ドン・チードル監督・主演。
1970年代後半のニューヨーク。 長らく音楽活動を休止中のマイルス・デイヴィス(ドン・チードル)の自宅のチャイムが鳴った。
体調不良とドラッグで、たった一人の生活をしていた彼は荒んでいたが、ドアの向こうにいたのは、彼のカムバック記事を書こうとしている音楽記者デイヴ(ユアン・マクレガー)だったが、彼はいきなり彼を殴りつける。 しかしこのままではどうしようもない彼は一瞬のすきを突き家に侵入、逆にマイルスを締め出してしまう。
彼はコロンビアから来たと偽り、インタビューを撮りたいと言い始めるが、マイルスは彼を連れてコロンビアレコードに出かけていく。 しかし長く休んでいるレコード会社は、早く新作をと必要に求めてくるが、その態度にキレたマイルスは拳銃を撃ち威嚇をしてしまうのだった。
そこにいた音楽プロデューサーのハーパー(マイケル・スタールバーグ)は、マスター音源があることを知り、自分と組まないかと話を持ちかけてくる。 しかしそんな誘いに乗らないマイルスは、その後デイヴと行動を共にするようになっていく。
しかし彼の頭の中には、元妻のフランセス・テイラー(エマヤツィ・コーリナルディ)との幸せな日々。 そして若かった二人の時がフラッシュバックしてくるのだった…
監督・主演をドン・チードルが勤めているこの作品、これが初監督作品なんでしょうね。 企画、脚本、製作とほぼ彼の映画になっているだけでなく、トランペットの特訓を積んでマイルスの外見、性格、仕種を完璧なまでに体現しています。 それだけでも必見の価値ありの作品だと思います。
冒頭は後年に撮った彼のインタビューシーンで始まりますが、彼が 「ジャズ」 という言い方を嫌い、自分の音楽はそんな狭いジャンルで語ってほしくないと言い 「ソーシャルミュージック」 と言い直させます。
これはマイルスの自伝的な物語で、デイヴとの絆を通してやっと語られる彼の音楽性を語ったシーンであることが後でわかります。
マイルス・デイビスはこの時期がどん底だったみたいですね。 私がCDを売っていた時代は、彼が復帰した後のこと。 それもワーナーに移籍した第1弾 「TUTU」 が発売になるころで、ワーナーのセールスがものすごく押していたイメージが残っていますね。 しかしセールス的にはそんなに芳しくなく、やはり売れるのは昔のアルバムだったと思います。
物語は彼の休業していた5年から復帰するシーンを描いていますが、その中で別れた妻でダンサーだったフランシスとの淡い思い出がフラッシュバックされています。 そこに忍び寄ってくる彼の音源を狙う悪徳音楽プロデューサーとの抗争、まあほとんどドラッグ漬けのギャングなんですが、彼の音源はやはり価値があるんですね。
しかしそれを彼はコロンビアには絶対渡さずずっと自分で持っています。 実はデイヴもこれを狙っているんですがね。
彼はどうやって復帰したのか? そのきっかけの出来事を描いているチードルの熱演でした。