2015年作品、パスカル・プザドゥー監督、サンドリーヌ・ボネール、マルト・ヴィラロンガ出演。
かつては助産婦として活躍し、今は子や孫にも恵まれ、ひとりで穏やかな老後を過ごしているマドレーヌ(マルト・ヴィラロンガ)。 彼女は車の運転をしていたが、交差点に差し掛かった時、いきなり自転車が横から現れ急ブレーキ、そして車が動かせなくなってしまった。
まだまだ元気な彼女の気がかりは、数年前からノートに書き記している “一人でできなくなったことリスト” の項目がどんどん増えていること。 車の運転もその一つになってしまったのだった。
そんな中で迎えた92歳の誕生日。 マドレーヌは孫たちから大型液晶テレビを送られた。 もちろん長男のピエール(アントワーヌ・デュレリ)からの贈り物で、長女のディアーヌ(サンドリーヌ・ボネール)、その夫のクロヴィス(ジル・コーエン)、孫のマックス(グレゴール・モンタナ)もいた。
お祝いに駆けつけた家族に、彼女は立ち上がり、あることを言いはじめる。 それは、みんなに迷惑をかける前に、自らの手で人生に幕を下ろすことにしたと言うのだ。
「2か月後の10月27日に逝くことに決めた」 衝撃の告白に、動揺する子供や孫たち、マックス以外皆そのテーブルから離れていく。
孫のマックスは少し理解があった。 しかし彼は逆にその日が気になっていた。 それは彼は学校をやめ、オーストラリアに行ってサーフショップを開くという計画をしていたからだった。 格安チケットを購入済みで、マドレーヌにはその日をずらせないかという事を言うが、マドレーヌの気持ちは固かった。
絶対反対を主張する家族たち。 その中で長男のピエールと、長女のディアーヌが残り、3人で昔のビデオを見始める。 そこには今は亡き父の姿も映っていたし、若い頃のマドレーヌの姿も。
彼女の世話をしているヴィクトリア(ザビーネ・パコラ)は、いつも一緒にいる時間が長く、マドレーヌの気持ちを一番理解していた。 しかし彼女が母をそそのかしたのではとディアーヌは疑いさえ持つのだった。 ピエールは母親がうつ病じゃないかと疑い、好うつ病を飲めば決心は変わると主張する。
限られた日々の中で、家族はマドレーヌの想い、そして彼女の生きてきた人生と触れ合ってゆく…
“尊厳死” を題材にした作品。 このモデルとなったのは、リオネル・ジョスパン元フランス首相の母の人生ということ。 娘で作家のノエル・シャトレが綴った小説 「最期の教え」 を原案に、自分の美学を貫き、人生を終える決意をした1人の女性とその家族の姿を描いたこの作品、“老い” という現代人が誰しも抱えるテーマは心に重くのしかかる作品でした。
同じテーマの作品として、「母の身終い」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13805981.html 「みなさん、さようなら」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/12686350.html という2作品で見ていますが、この作品はより現実的であり、残される子供たちに対する母の配慮の姿も画かれています。
どうしても母の気持ちが理解できず、激怒してしまう長男に対し、長女のディアーヌは、だんだん母のここに至った気持ちを受け入れていくんですね。 サンドリーヌ・ボネールが演じていますが、多くの出演作がありますが、私は初めてでした。
なんと言っても主人公のマドレーヌ役のマルト・ヴィラロンガの演技が凄い、衰え行く老婆の姿を見事に演じていくんですが、若い頃の躍動する姿と見事に対照をなしていました。
最後に母と娘がひと時を過ごすシーンがあり、二人で裸でバスタブにつかるシーンは正直心が痛かった。 しかしこの作品のラストは最後の姿ではなく、若い母の全裸の飛び跳ねる姿なんですね。
人生の幕の降ろし方、いずれ自分にも来ることを痛感させられる作品でした。
どんどん一人ではできないことが増えるマドレーヌ
そして92歳の誕生日彼女は宣言する
動揺する子供夫婦たち
理解するヴィクトリア
母の会いたかった人のところに連れて行くディアーヌ
そして最後のひと時・・・