anttiorbの映画、映像の世界

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或る終焉

2015年作品、ミシェル・フランコ監督、ティム・ロス主演。

デヴィッド(ティム・ロス)は、終末期患者を受け持つ看護師。 いま担当しているのはサラ(レイチェル・ピッカップ)という女性、彼女はもうデヴィッドに全幅の信頼を置いている感じで、風呂場で全裸となり全身を洗ってもらっている。 ギスギスに痩せた彼女にはあまり生気すらない。
親類がサラのところに訪ねて来ていても、しっかりデヴィッドはそばについている。 しかし、連絡が入りサラが亡くなったという知らせが来た。 すぐに駆け付けたデヴィッドは、丁寧にサラの体を綺麗にしてあげるのだった。
サラは末期のエイズ患者だった。 ひとり酒場で飲んでいた彼は隣の婚約したカップルにサラのことを妻だとさえ言うのだった。
デヴィッドには別れた妻・ローラ(ネイレア・ノーヴィンド)と娘・ナディア(サラ・ サザーランド)がいるが、もちろん離れて暮らしている。
デヴィッドは次の担当する患者は頑固な老人・ジョン(マイケル・クリストファー)だった。 口は悪いがジョークの好きな彼とデヴィッドの関係は良好だった。
やんちゃなジョンは、人の目を盗んではエロ動画を見たがるのだった。 しかし脳卒中で 半身麻痺となったジョンは、云う事の効かない体に絶望し、しばし死にたいと口走る。 
そんな心の支えになっているのがデヴィッドだったが、彼はシフトの交代要員をある日無断で追い返してしまう。 もちろんその分は無報酬で、その男が働いたことにするのだが、そんな入れ込んだ感じのデヴィッドに家族は不信感を抱き、セクハラで訴えると彼の会社に報告をするのだった。
そして会社を解雇されたデヴィッドは、ナディアに会いに行き、別れた妻とも久しぶりに再会をするのだった。 どうして3人は分かれてしまったのか? それは、息子ダンの死をきっかけに疎遠となったのだった。
職を失ったデヴィッドに、ある日、末期がんで苦しむ患者のマーサ(ロビン・バートレット)から、安楽死の幇助を頼まれる。 初めはデヴィッドのことを警戒していたマーサだったが、真摯な仕事ぶりにいつしか全幅の信頼を置くようになるのだが…

凄い作品を見てしまったというのが正直な感想ですね。
監督はミシェル・フランコ、若干37歳の若い監督ですが、これは凄い才能。 この若さでこういうテーマを撮りきる事態ちょっと怖い気さえしてきますが。
主演はティム・ロス、同じ年に 「ヘイトフル・エイト」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13946219.html に出演していますが、役者って本当にいろんな人間になりきれるもんだとつい思ってしまいますね。
看護師のデヴィッドは、主に受け持つのは終末期患者なんですね。 これ自体辛い仕事だと思います。 私の妻を最後看取った病院も、周りではもう受け入れがたい患者を、ある意味精神的ケアをするセクションを持つ病院でした。 だから多くの旅だっていく患者がいる病院でした。
そこで働く看護師の方たちは多くの死んで行く患者を見ていて、ある意味慣れというか、思い入れも自制をするすべを嫌でも身に着けているんだろうなあと思っていました。
この作品のデヴィッドは、ほぼマンツーマンで付き添っていくんですね。 もちろん会社から派遣されているので、シフトがあり、交代要員もいるんですが、彼の仕事ぶりはもうどんどんその患者の多くの部分に嫌でも入り込んでいきます。
患者が必要な物を家族のように揃えたり、自腹で買っているだろうというシーンもありました。 心の薄汚れた自分なんか、何か下心があるのではないと中盤まで思ってしまうほど献身的なんですね。 確かに逸脱してしまうほど患者と仲良くなりすぎて、家族に胡散臭がれたりします。
そしていつしか彼に全幅の信頼をし、皆が彼に身をゆだねてしまう。 しかし一体どうして彼がそんな辛い仕事を進んで引き受けるのか? 作品中は詳しくは語られていませんが、ダンという息子の存在が大きいんですね。
彼はある理由で命を落とし、それが家族を別れさせ、ある意味彼自身も壊れ、どうやら彼の一生はその贖罪で終生過ごすことが義務付けられている感じさえするんですね。
そしてそんな彼がとうとうある一線を越えてしまう事から大きな悲劇を味わってしまう。 作品はそこでバッサリ終わるんですが、この作品を見てある映画を思い出しました。
でもあの映画は最後にほんの少し日が差しこんだ気がしましたが、これはそれさえも許してくれなかった。 悲しさいっぱいで劇場を後にした作品でした。
思い出した映画はこちらです→ http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13606384.html

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サラをベッドに移す

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サラが亡くなりひとりバーで

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脳梗塞で倒れたジョンに付き添う

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しかし家族に訴えられ、元妻のところに

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娘のナディアと再会

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そしてマーサを受け持つことに

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