2011年作品、監督・撮影・プロデューサー:森田惠子、ナレーション:中村啓子。
小さな町はもちろんのこと、大都市でも映画館がなくなり、その代わりにシネマコンプレックスが誕生している昨今、日本中で同じ映画が一斉に上映されるようになって久しい。 こんな時代に、北海道にある人口1万4千あまりの、牧場と漁業の町・浦河町には、創業93年を迎える映画館・大黒座が健在だ。
大正時代、材木商人だった三上辰蔵がドサまわりの講談師や浪曲師を家に招いたのを起源とする大黒座は、現在、映画館は3代目、館主は4代目となるが、ミニシアターとして生まれ変わった今も舞台がある。
浦河町は過疎化が進み、人口が減り続けているが、大黒座の灯は点り続ける。 4代目 館主・三上雅弘さんと佳寿子さん夫妻は映画館を続けようと決心したが、現実は厳しい。 しかし、 大黒座を応援する人々や、 “大黒座まつり” を主宰する人、サポーターズクラブを立ち上げる人、遠方から手作りの番組表を送ってくれる人など、たくさんの人によって、大黒座は支えられている。
木造で桟敷席だったという1館目の大黒座を知る人から、現在の上映される番組をすべて観ているという人まで、たくさんの人へのインタビューを通して、映画館と町の文化を大切にしたいという熱い思いが伝わってくる…
先日新しく書庫を作り、「映画を観る場所」 という題名を作ったのですが、そうした記事を書こうとしたきっかけはこの作品を見たからでした。 舞台は、北海道の浦河街、そこにある大黒座という映画館のドキュメンタリー作品。
創業1918年、当初は芝居小屋として作られたのですが、サイ レント映画が1920年に上映されたという記録があるようですね。 映画館になったのは、戦後、改装された1953年からという感じになっているようです。
映画全盛期のころの話を、今の4代目館長のお母さんの雪子さんが振り返って話しているところが、なんとも良かったですね。 まだテレビよりの映画が娯楽になっていた時代、もちろん作られる作品も多く、ここは漁師町だったので、時化で漁船が出ないときは、漁師さん用の上映作品に変えてしまうという話のくだりは、映画館が繁盛している時代ならではのエピソードでした。
また今作の中に、同じように映画館を存続していこうという、他の地域の話も盛り込まれていました。
そしてなんとか今は2008年にオープンした 「シネマ尾道」 が、営業しているという事ですが、これも粘り強い働きかけで複館したというお話が入っています。
気軽に行ける、おらが街の映画館、もう普通にただ作品を上映するだけでは成り立って行かない苦労がぎっしり詰まっている作品ですが、これはシュリンクしていく日本のある縮図のようなところと、日本の文化としての映画存続に対する考え方を、また反面映画という気楽に観れる娯楽としての暖かさを描いた、貴重なドキュメンタリーでした。
さすがに気軽に行ける場所ではありませんが、頑張っておられるうちに一度は行きたいところの一つになりました。
改築前の大黒座と先代
そして現在の姿
昔の話をする雪子さん
現館主の雅弘氏
そして森田監督と