anttiorbの映画、映像の世界

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繕い裁つ人

2015年作品、三島有紀子監督、中谷美紀三浦貴大出演。

神戸の街を見渡す坂を上ると、その店はあった。「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。 店主の南市江(中谷美紀)が作る服は、いつも即日完売。 牧葵(片桐はいり)の店しか置いていない一江の服、すべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点ものだ。
神戸のデパートに勤める藤井(三浦貴大)は、彼の働いている大丸神戸店になんとか一江の服を置くべく上司を説得した。 そして市江にブランド化の話を持ち掛けるため、毎日のように南洋裁店に通うのだった。
しかしまるで“頑固じじい”のような彼女は、全く興味を示さない。 一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ、市江はそれで満足だった。
家には母親の広絵(余貴美子)が、家事一切をしている。 たまたま早く店についた藤井は、まだ一江は起きていなかった。 やっと起きてきた彼女 は藤井が来ていることを知らず、寝間着のまま起きてきた。 びっくりしてそのまま部屋に戻った彼女は、たっぷり時間をかけていつもの仕事着で降りてきた。 前の晩は遅くまで仕事をしていたからだった。
彼女は家事は一切できなかった。 紅茶も入れることができない。 広絵は藤井に団子を出し、もてなすのだった。
南洋裁店には、いろんな客が来る。殆どは先代の作った服の手直しに来るのだった。
この日も、ゆき(杉崎花)が母の服を自分が着られるようにならないかと持ってきた。 大きな丈で、背の低い自分はなんとか、着こなせないかというのだった。 大胆にカットを入れる一江。 さらに、いろんな人が一江に相談に来る。 全部の人の顔と名前が一致する一江、ここはそんな店だった 。
そんなこの店に触れながら、藤井はその中にも一江の心には、自分のデザインした服を作りたいという感情があると信じ、なんとか彼女独自の服を作らせようとするのだが・・・

当初、この作品は無理かなと思っていましたが、なんとか時間が合いみることができました。
三島有紀子監督作品は、「しあわせのパン」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/8023295.html 「ぶどうのなみだ」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/12266236.html と見てきましたが、これは仕立て屋の話で、新鮮でした。
もちろん男性の自分には洋服を作るなんて決して出来ませんし、オシャレからはもう遠ざかっていく歳なんで、どこまで共感できるかというところでした。 しかし、思いのほか、よくわかるはなしでした。
というのは、私の職場は神田なんですが、実は神田は、サラリーマンが多く、場所柄でしょうかこういう仕立屋さん、紳士服の店が多いんですよ。
そしてひょんなことからその中の老舗の個人店のご主人と、数年前に知り合ったことを思い出したんですね。
もう70歳になり、神田の再開発で、店のある区画がその箇所となり、さすがにここらで店をたたむ事にして、あとのお得意さんは実家でお相手をすると言っていたことを思い出しました。
この作品には、伊武雅刀演じる橋本さんのような存在でした。お店がある頃たまに前を通った時、顔を出すと相手をしてくれた気のいい職人気質のおじさんでした。 しばらくは年賀状のやり取りをしていたんですがね。
いい洋服って一生着られるんですよね。 今は安く、メイドインチャイナがいっぱい入ってきますが、そんな服はもって3年です。 それもシーズンだけ着てですね。
先代が亡くなった時、店のお客は先代が作ってくれた服を着て先代の遺体の入った車を見送るシーンがありました。 皆作ってくれた服への感謝と、服に先代の気持ちが宿っているかの如くでした。
こだわりを持った職人が色んな業界から減ってきているこの時代、少しでもそれを継承できる人材がいればなあと思った、味わい深い作品でした。

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祖母の店を守って来た一絵

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彼女の服を唯一おいている店

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祖母の服を仕立て直し、孫娘に着させる

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藤井は彼女にブランド化を進めるが

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ほとんど毎日通う藤井

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