anttiorbの映画、映像の世界

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かあちゃん

2001年作品、市川崑監督、岸恵子主演。
 
「ごめんください」 そう言って戸を開き中を伺う若い男、彼の名は勇吉(原田龍二)という。
誰もいないとわかると、恐る恐る中に入っていく。 ほっかむりをして、中を物色するが、ここは貧乏長屋の一軒。金目の物など全くない。 そんなぼろ屋でも、誰かが帰ってくるのだった。 大工の熊五郎石倉三郎)という男だったが、すぐに足跡を見て泥棒が入ったのがわかるが、逆に良い考えが浮かぶ。
そこに来た大家(小沢昭一)に、泥棒に入られたので、店賃を待ってほしいととっさに言うのだった。 しかし大家は、取られた物を書き出して、お上の届けろというのだった。 でも取られたものが無い熊五郎は、逆に大家にとられた物が何か聞くのだった。
床下から抜け出た勇吉は、通りかかった役人から隠れ、別の家を探そうとするのだった。
天保末期。 老中・水野忠邦による改革の効なく、江戸下層階級の窮乏は更に激化していた。
いつも飲み屋でつるんでいる左官風の男(コロッケ)、印半纏の男(中村梅雀)、商人風の男(江戸家小猫)、そして禿げ老人(春風亭柳昇)。  彼らが話しているのが、おかつ(岸惠子)の話だった。 
おかつの家は一家6人総出で働きづめ金を貯め込んでいるという噂があったのだが、たいそう倹約家だった。 所謂 “ケチ” と噂されていた。 印半纏の男がある怪我をした長屋の男を助けるために、各家からお金を集金していた時、たったの20文しか出さなかったと言っているのだが、その時、おかつはみんなで働いているのは理由があると言うのだった。 男どもはいつかおかつは、長屋を買い占め大家にでもなるのではといっている。
そんなおかつの家に、勇吉が忍び込むのだった…
 
市川崑監督の独特のタッチ、すぐにわかりますね。 頑なに自分のスタイルを貫いた監督でしたね。  私はそんな監督の作り方が好きでした。 山本周五郎原作のこの作品、貧乏長屋での心温まる物語です。
この後はネタバレなので書きませんが、この “かあちゃん” こと、おかつの生き方が何か昔の日本のお母さん像のような気がします。 
父親はなぜかいません。 そして5人の子供たち、みな “かあちゃん” に全幅の信頼を寄せています。 それはなぜ必死に皆が働いているのかがわかれば、納得できるんですね。 そしてその心に勇吉が触れていくんです。
周りのキャストが豪華で異質ですね。 飲み屋でつるんでいるメンバーがまたいいですね。 お笑いの3人と何故か中村梅雀が入っています。 全部お笑い芸人にしないところが憎いですね。 そしてその中にちゃんと晩年の市川作品の常連も入れています。
96分の短い作品ですが、数多くの賞を取ったこれも秀作でした。
 
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生活に困って盗みに入る勇吉

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そこで深夜起きていた“かあちゃん

 
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ここでは家族が一生懸命働いていた、ある理由で

 
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家族の心にだんだん触れていく勇吉

 
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そして彼も…

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