anttiorbの映画、映像の世界

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眠れる美女

2012年作品、マルコ・ベロッキオ監督、 トニ・セルヴィッロ、イザベル・ユペールアルバ・ロルヴァケル出演。
 
2009年、イタリア全土を揺るがすある女性の尊厳死事件が起こる。 17年前、21歳で交通事故に遭い、植物状態となってしまったエルアーナ・エングラーロの両親は延命措置の停止を求め、長い間裁判闘争を行なってきた。 
2008年、最高裁判所がようやくその訴えを認めるが、彼女の延命措置の停止を行う病院はなかなか見つからず、2009年1月、イタリア北東部の町ウディネの病院が受け入れを表明、2月にエルアーナはミラノからウディネへ搬送される。
病院前にはカトリック信者が毎日反対運動をしている。 ベルルスコーニ首相は、自分に対する票田のために、エルアーナの延命措置を続行させるべく、法案の強行採決を画策していた。 物語は3つの面で進行する。
1.議員のウリアーノ・ベッファルディ(トニ・セルヴィッロ)はエルアーナの延命措置を続行させる暫定法案に賛成票を投じるかで頭を悩ませていた。 実は、彼自身が逡巡の末、妻の延命装置を停止させた過去があったのだ。 母を死なせた父に、娘マリア(アルバ・ロルヴァケル)はずっと不信感を抱いていた。 マリアはエルアーナの延命措置が続行されるよう、ウディネでのデモに参加する。
2.医師パッリド(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ)の同僚たちは仕事もそっちのけで、エルアーナの死の時期を賭けごとにしていた。 患者の家族たちは医者への不信感むき出しで、治療への不満をぶつけてくる。 
パッリドが廊下を歩いていると、薬を盗もうとしたロッサ(マヤ・サンサ)が看護師たちに抱えられてきた。 その時、ロッサはパッリドたちの目の前で手首を切る。 幸い一命を取り留めるが、眠った彼女は一向に目を覚ます気配がない。 パッリドはそんな彼女の傍らに寄り添う。
3.伝説的な女優(イザベル・ユペール)は輝かしいキャリアを捨て、植物状態の娘ローザの看病に専念していた。 娘のために毎日のように祈りを捧げ、エルアーナと娘を重ねて報道を目にしては涙を流していた。 
俳優志望の息子フェデリコは、母を盲信的に愛し、女優として尊敬のまなざしを注いでいるが、その愛が彼に返ってくることはなく愛に飢えていた。 彼女の夫も妻のかたくなな態度に心を傷め、夫婦仲は冷め切っている・・・
 
尊厳死という重いテーマを3つの物語からとらえた作品です。
微妙に物語同士が重なり合い、場面が移っていくのですが、決して解りづらくはありませんでした。 
政治家として、夫としてこのテーマに向き合うウリアーノと娘のマリア。 実際に娘が植物状態になってしまった元大女優のイザベル、この二つの物語はテーマとの関わり合いが解りますが、真ん中の物語はちょっと肌合いが違いますし、一番決着のつけ方が難しい話でした。
尊厳死は、日本でもなかなか難しいテーマですよね。 もし自分が植物状態になったら、いち早く楽にしてほしいと思いますが、生前から何か遺言でも残しておけば別ですが、当人以外に判断をゆだねるのはただでさえ酷というものです。
正直どちらともいえない問題でしょう。 “生きていてほしい” という気持ちと “楽にしてあげたい” 気持ちがどちらも悪の心とは思えないからです。
私なら、意志のやり取りができないなら自分であっても家族であっても終わりにしたいと見ながら感じていました。 それが殺人と言われるとちょっと悲しいですね。
 深くて重いテーマでした。(G)



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左端がウリアーノ、思い悩む彼は辞職さえも考えている

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娘のマリアはそんな時恋に落ちる

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犯罪をしようとする女を止めるバッリド

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その女は病院で突然手首を切る

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女優として休業状態の彼女

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ただ生かされているだけの娘

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