1985年作品、エクトール・バベンコ監督、ウィリアム・ハート主演。
南米の刑務所の監房の中。そこに二人の男が同じ房に入れられていた。 ひとりは政治犯のバレンティン(ラウル・ジュリア)で偽造パスポートを使おうとして現場を押えられたのだった。 もう一方のモリーナ(ウィリアム・ハート)はホモセクシュアルで風紀罪に問われて刑務所入りとなったのだった。 同房に居合せながらまったく別の世界をもつ二人。
第2次大戦ナチ占領下のパリ、美人シャンソン歌手レニ(ソニア・ブラガ)と青年ドイツ将校の恋、それがモリーナの今語っている映画の内容だった。 バレンティンにもかつては愛する女がいた。 政治家と癒着する大資本家の娘(ソニア・ブラガ2役)で、反体制活動家の彼は、活動を続けるために彼女を捨てて旅立ってしまったのだ。
モリーナは、ここに収監される前にある男性に恋をしていた。 ガブリエル(ヌノ・リアル・マイア)という給仕で、黒人なのだが、洗練された身のこなし、いっぺんで彼は虜になった。 もちろんモリーナはゲイの化粧をしているが、ガブリエルは紳士的に接してくれる。
時間をかけなんとか友達になることに成功したモリーナだったし、ガブリエルも彼のことを理解してくれた。 ガブリエルは家族もいた。 だからモリーナは、決してガブリエルが嫌がることはしないし、体を求めることも禁じていた。
モリーナは、より親密になるために、もっと何か仕掛けがあった方がいいと提案をする。 それは母からの差し入れが良いのではというと、所長たちは彼の意見を尊重し始める。
ゲイのモリーナと政治犯のバレンティン、水と油のような関係の二人ですが、同室のよしみで、会話はあるんですね。 どちらかというと、モリーナの方が一生懸命バレンティンの気を引こうとしています。 しかしそれはゲイの本能ではなくある隠された役目のためなんですね。
原作小説から、まずはじめに戯曲化された後、今作の映画化になったようです。 二人の基本会話劇が主で、回想シーンが入るので、舞台劇にはいい作品なのかもしれません。
ですから後半で、目的を達したモリーナが、出獄した後は、けっこうサスペンス仕立てに変化するんですね。 まあラストのところだけですが。
やはり印象深いシーンは、バレンティンが、夜中に急な腹痛を訴え、便失禁するところですね。 今まで蔑まれていたモリーナが実に献身的に看病することで、バレンティンの信頼をしっかり得ることができるシーン、しかしそこにはバレンティンに対する真っ白な愛情が浮かんでいるんですね。 それがクライマックスの彼の行動に繋がっていきます。
監督はエクトール・バベンコ、今作初鑑賞です。 そして対照的な役を演じるウィリアム・ハートと、ラウル・ジュリア。ハート出演作品は、「インクレディブル・ハルク」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/6132887.html でのロス将軍が印象的ですが、「イエロー・ハンカチーフ」を見たいんですがね。
ラウル・ジュリアはなんと言っても私には「アダムス・ファミリー」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13568040.html http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13571961.htmlシリーズですが(^^)