anttiorbの映画、映像の世界

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人生タクシー

2015年作品、ジャファル・パナヒ監督、主演。

タクシーがテヘランの活気に満ちた色鮮やかな街並みを走り抜ける。 運転手は他でもないジャファル・パナヒ監督自身。 ダッシュボードにはカメラは置かれている。乗って来たお客を映そうというのだった。
まずはじめに中年の男が乗り込んできた。 そしてほどなく女性が後部座席に。 男は、「泥棒は死刑にしてしまえ」 と主張しまくるが後部の女性は完全と反論を開始する。 そして、女性から、「あなたの職業は?」 と聞かれる男性だが、彼は反対に女性に聞き返す。 女性は教師だった。 男性は降りるときに教えてやるとうそぶき、降りる間際に、「俺の職業は路上窃盗だ」 と言って去って行く。
そして次に乗ってきたのは小柄な男で、海賊DVDを顧客のところに売りに行くところだった。 その直後、いきなり乗り込んできたのが、なんとバイク事故を起こした男と、その妻だった。 血だらけの男とその妻を乗せ、病院に向かって走り始め、男は髪と書くものを求め遺言を言うと言い出す。 しかし、そんなものは持ち合わせていないと言うと、携帯で動画を取りこれを証拠にしてほしいと、妻に残す財産の話を始める。
病院に着き二人が出て行こうとした時妻は、その動画をくれと言うが、携帯を持って行かれては困るので、あとで編集して送るという事にするのだった。
小柄な男は、運転手がパナヒ監督と知って、顧客の映画監督志望の男に一緒に組んでいるととっさに嘘をつく。 その男は映画の題材についてパナヒ監督に質問をするが、それが一番難しいところで、自分で見つけてこそ映画だと言う。
そしてどれを見たらいいか選んでほしいと言ってパナヒに訪ね彼が選んであげると、大量にDVDを買って行った。 しかしとっさに嘘をついたことで、小柄な男は申し訳ないと何度も謝るのだった。
そして次に老婆が乗り込んできた。 わがままな二人は無理難題をパナヒ監督に言うのだった…

予告編を見ると、どんな作品なのかちょっとわからない感じでした。 監督と、主演の運転手はジャファル・パナヒ自身、私は監督作をまだ見た事が無かったので、まったく先入観ゼロでの鑑賞となりました。
監督は反政府的な言動を繰り返し、目をつけられている存在なんですね。 過去作の、『チャドルと生きる』 『オフサイド・ガールズ』 ともにイランの現体制を批判する内容であるとして、イラン国内では公開禁止となってしまいました。
さらに2010年には現政権を批判したとして拘束されていて、映画祭の審査員をキャンセルする事態になり、同映画祭で女優賞を受賞したジュリエット・ビノシュを始めとする各国の映画人は言論の自由の名の下に、イラン政府への抗議表明とともにパナヒ監督の解放を要求し、その後5月に保釈金20億リヤルで釈放されたそうですね。
彼は20年間映画製作をしてはいけないという事になっているようですが、それを逆手に取った手法での撮影、そして公開という感じに見えるんですが。
ドキュメンタリーの技法な感じの作品ですが、おそらく役者に演じさせているんでしょうね。 彼らの中で言う事に、いろんな風刺のきいたセリフが多く、イランの抱える問題点がちりばめられています。
面白いのは、映画を撮ろうと思っている若者が出てきたあとに、姪を迎えに行き、彼女も映画を撮ろうとカメラを回し始めるんですね。 彼女の行動こそ監督の主張の気がしますし、海賊DVDを売ろうとする小柄な男にも、しっかりと主張させています。
POV手法な感じですが、単なるコメディではなく、監督が感じている今の国家体制の批判がよく行かされている作品、過去作もしっかり見なくては! の監督だということがわかります。

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窃盗は死刑!それに反対する女教師

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海賊版DVDを売る男と顧客

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その後いきなり乗り込んできた老婆二人

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そして監督の姪

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そして友人の女性も

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そして昔の友人の下へ

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