ばしゃ馬さんとビッグマウス - anttiorbの映画、映像の世界

2013年作品、吉田恵輔監督、麻生久美子、安田章大出演。

学生時代からシナリオライターを目指しているが、なかなか芽の出ない34歳の馬淵みち代(麻生久美子)は、コンクールへの応募を続けている。　しかし未だに一次通過さえしたことがなく、落選するたびに　“こんなに頑張っているのに！”　と自己陶酔して泣いている。

みち代はいくつかのシナリオスクールに通った経験があるが、何かせずにはいられず、再び社会人コースのシナリオスクールに通い始める。　道連れにされたシナリオ仲間のマツモトキヨコ(山田真歩)は、聞き飽きたような講義の内容を熱心にメモするみち代に内心呆れていた。

そこで出会ったのは、自称もうすぐ天才脚本家の超自信過剰な　“ビッグマウス野郎”　こと天童義美(安田章大)・28歳だった。　まだシナリオを書いたこともないのに“脚本家”　という肩書きの名刺を作っている天童は、上から目線でみち代に講釈をたれる。　しかしみち代は全く相手にしていなかった。　しかし天童は　“ばしゃ馬”　のようにシナリオを書き続ける馬淵にひと目ぼれだったのだ。

ところが天童の友人に監督がいると聞き、みち代は態度を一変させる。　みち代は天童の誘いに乗り、バイト仲間を誘って合コンへ行く。　

しかし天童の友人は建築現場の監督だった。　天童は追い討ちをかけるように　“俺が本気を出したらすごい”　といつもの大口を叩き始め、みち代はすっかり不機嫌になる。

そんなある日、シナリオスクールに映画監督の宇野（坂田聡）とプロデューサーが来る。　みち代はこのチャンスを逃すまいと宇野監督に近づき、次のシナリオを読んでもらう約束をする。

監督が興味を示した　「老人ホームを舞台にした介護士の話」　を書くため、みち代は元彼の松尾（岡田義徳）が働く老人ホームでボランティアをさせてもらう。　松尾も以前は役者を目指しており、今も夢を追い続けるみち代を応援してくれる。

天童は相変わらずシナリオも書かずに大口を叩き、みち代をイラつかせる。　みち代は天童のことを松尾に愚痴るが、“昔はみち代もそうだった”　と言われてしまう。

天童は執筆活動をするため旅館に泊まり込むが、シナリオは一行も書けない。　みち代は松尾に未練があり、シナリオのためとはいえ、松尾のそばにいられることが嬉しかった。　主人公のモデルを松尾にして第一稿を書き上げたみち代は、それを松尾に手渡し、さらに監督へ見せに行く。　しかし監督からは　“恋愛ものにしか思えない”　とダメ出しされ、やんわりとシナリオの持ち込みを断られてしまう。　みち代は悔しくて、徹夜でシナリオの直しをする。

しかしコンつめたみち代は、仕事中居眠りをしてしまい、痴呆の患者が暴れだしたのに気が付かず、ホームは大混乱になってしまった。　駆けつけた松尾はさすがに不機嫌となり、その感情のママ、みち代のシナリオを酷評する。　とうとうみち代は八方ふさがりになってしまうのだった…

これは劇場で見たかった作品、麻生久美子主演作でも評価の高かった作品ですね。　彼女の作品は　「モテキ」　http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/6510566.html　のるみ子役、「グッモーエビアン!」　https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/8059980.html　広瀬アキ役がぱっと浮かびますね。

一方、安田章大は関ジャニ∞のメンバー、俳優出演作としては　「スキャナー記憶のカケラをよむ男」　http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14109287.html　に変わった役で出演でした。　

監督は吉田恵輔、「麦子さんと」　http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13615399.html　「銀の匙 Silver Spoon」　http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11222442.html　「ヒメアノ～ル」　http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14181600.html　どれもそれぞれ違うタイプの作品ですが、各ジャンルしっかり面白かった。好きな監督ですね。

物語はちょっとした夢を追っているちょっとこの年まで続いている青春映画といった感じですね。　夢を真剣に追い続けている人間は、何時まで経っても青春は終わらないものかもしれません。

ただ、この作品この後、とうとうみち代が大きな壁にぶつかり、大泣きをしながら松尾に吐き捨てるセリフがあるんですよね。　「夢をあきらめるタイミングがわからない」ばしゃ馬さんとしてはとにかく、一生懸命真面目に真剣に突っ走ってきたんですね。ただ、入選しないのが当たり前、どうして自分は頑張っているのに認めてもらえないのか？　もしかしたら、本当の自信作を今まで書き上げたことが無い、どこかで本人も気が付かないところで妥協していたのかもしれない。

ただ、だからといって適当な、素振りだけでシナリオは描いていないし、他人以上の努力はしていることが見受けられるんですが。

夢を追っているそぶりをしているだけの男の姿は、是枝監督の　「海よりもまだ深く」　http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14165839.html　の良多を思い浮かべました。　彼は離婚まで行ってしまい、半分以上腐っていましたが、決着をつけれないとこうなってしまう例ですね。

安田君演じる天童は、みち代と会う事によって良多にはならなそうな感じ、二人の人生の続編があってもいいかも？　と感じる爽やかなラストでした。