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湾生回家

2015年作品、ホァン・ミンチェン監督、冨永勝、家倉多恵子、清水一也、松本洽盛、竹中信子、片山清子、本間岐理、ヤン・ホェイルー出演。

下関条約の締結された1895年から1945年までの50年間、台湾は日本に統治されており、戦前の台湾で生まれ育った約20万人の日本人のことを “湾生” と呼ぶ。
当時、日本から公務員や企業の駐在員、また農業従事者も移民として台湾へと海を渡った。 そして敗戦後、中華民国政府の方針によって彼らのほとんどが日本本土に強制送還された。
引揚者は、一人あたり現金1,000 円(当時)とわずかな食糧、リュックサック 2つ分の必需品しか持ち出すことを許されなかった。 敗戦によって台湾から日本本土へ強制送還された日本人は軍人・軍属を含め 50 万人近くおり、彼らの多くにとって、台湾は仮の住まいではなく一生涯を送るはずの土地だった。
しかし残りたいという願いは叶わなかった。 台湾で生まれ育った約20万人の “湾生” にとって、台湾は紛れもなく大切な故郷だった。
このドキュメンタリーは、敗戦という歴史の転換によって故郷から引き裂かれ、未知の祖国・日本へ戻された “湾生” たちの里帰りを記録し、彼らの望郷の念をすくい取る。
撮影隊は40名近い “湾生” に取材をし、そのうち6名の物語を中心にまとめている。 時の流れを超えて彼らは台湾で過ごした日々との再会を願い、失ったものを探し求める。
ある人は幼馴染の消息に心を震わせ、ある人は自身のルーツを求めて台湾の地を踏み、またある人は日本に引き揚げて初めて差別もあった台湾統治の真実を知る。自分たちの居場所はどこなのか、台湾への里帰りは戦争に引き裂かれたアイデンティティーを修復する旅でもあった・・・

数少ない海外旅行で、私が行ったのはタイと、この台湾。 やはり住み慣れた日本が一番と思っている私にとって、それでもどこなら行っても良いかと思った中では、いの一番に浮かんだのが台湾でした。 それは外国というより、昔の日本があるのでは? という思いからでした。
学生の頃中華料理屋でバイトしていた私に、けっこう外国人留学生が入ってきました。 その中に台湾の女性もいまして、けっこう仲が良かったんですよね。 私より3つ上でしたが、よくみんなで遊びに行ったりしていました。 その子は日本でずっと暮らしていきたい、できれば日本人と結婚したいと思っていたようですが。
そんな時、同じ台湾の家族が食べに来たことがありました。 大陸の人も来ましたが、その時彼女の顔が曇ったのが気になり、聞いたところ 「あの家族は台湾人で、北京語ではない土着の言葉を話している」、彼女はそれに嫌悪感を持っていたんですね。
当時はそんなもんか、と思っていましたが、後年台湾の歴史をちょっと勉強すると、台湾という国は、過去大陸から何度も人間が流入してきて、昔から住んでいた人種と交わり、彼女の家族はどうやら第2次大戦後中国から来た国民党=中華民国の人のようでしたね。
だから、はっきりと、土着の言葉を話す、もしかしたら生粋の台湾人を蔑んでいたのかもしれない。 「恥ずかしい言葉です」 と言った時の彼女の言葉、表情を今も忘れられない。 そういう悲しい歴史を持っているのが台湾かもしれません。
今作は、その第2次大戦が終わり、強制的に日本にほとんど追放された台湾生まれの日本人にスポットを当てたドキュメンタリーでした。

私も肌で少しだけ感じましたが、亡くなった妻はもっと濃い体験をしたそうです。 ここで彼女の体験談を話すと、親子3人で勤続15年での台湾旅行をした時、家内は仕入れを兼ねて別行動、いろんな懐かし系の店を回った時のことです。
ある店に入って行くと、日本語ペラペラのおばさんが出て来たそうです。 家内が日本人だと知ると、そのおばさんのお父さんが出てきて、家内を奥に招き、昔の話をしてくれたそうです。 おばさんは日本統治下以降に生まれたそうですが、おじいさんはバリバリの統治下経験者。 しかし大変好意的で、日本の歌を何曲か歌ってくれたそうです。
政治や歴史に興味の無い妻でしたが、何か感激してその夜夕食を食べながら話してくれました。 
残念ながら私はそういう出会いが無い旅行で、高雄に一人でオプションで行ったときの通訳のおじさんは、やはり世代が後で、現状の政治についての話ばかりでしたし、日本にはよく行くが仕事としてという割り切った感じの人でした。
しかし、妻を通して感じた、台湾と、日本の絆のようなもの、この作品では、そんな自分の生まれ故郷を感じる “湾性” を追ったドキュメンタリーでした。
台湾で探す幼馴染み、自分の住んでいた地を訪れる人、通っていた学校、父の勤めていた場所、そして新しく出会った台湾人たちとの交流、見ていて微笑ましさと、ちょっと物悲しく思えるドキュメンタリーです。
「台湾が私の故郷」 ♪ふるさと♪の曲がバックで流れる冒頭シーン、見て行くにつれその意味が心にしみてくる作品でした。(川)

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昔の友と再会できた富永さん(左から2番目)

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台湾を訪ねるようになって体調がよくなった家倉さん

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自分の住んでいた付近を歩く清水さん

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思い出を語る松本さん

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台湾こそ故郷と語る竹中さん

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病気で動けなくなった片山さん、娘が彼女の実の母を捜しに日本へ

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彼らにとって台湾は“故郷”

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日本への帰還船

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