2014年作品、ミシェル・アザナヴィシウス監督、ベレニス・ベジョ主演。
1999年、ロシア兵はチェチェンに侵攻していた。 ゲリラと言いながら、どう見ても民間人に難癖をつけ、挙句の果てには殺してしまう。
殺されたのは少年・ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)の両親だった。 家からその惨劇を見ていた彼は、赤ん坊の弟を抱きかかえ、必死に物音をたてないで隠れ、兵士たちをやり過ごしていた。
ハジは、姉も殺されたのではと思い、ここが危険だと感じ弟を連れて脱出する。 途中ロシア軍に遭遇するが、それをやり過ごした後、彼は同じチェチェン人で安全そうな家の前に弟を置き、ただ一人放浪を始めるのだった。 自分一人で赤ん坊の面倒を見ることはできないとハジは思ったからだった。
途中ロシア軍から逃げてきた車に拾われるが、彼は決して口を開かなくなっていた。何を聞かれても答えないハジ、しかしまわりの人間は親を失ったからだと悟るのだった。
そのころ、姉のライッサ(ズクラ・ドゥイシュビリ)は何とか生きていた。 彼女は必死に家に帰るが、弟たちの姿が見えないので、探し始める。
ハジは何とか街へたどり着いた。 しかし、行くあてもなく誰も信じられずにいた。
手にしていた食べ物を物欲しそうに見ているハジ。 半分分け与えるが、彼はなかなか手を出さない。 しかし半分を置き様子を見るとさすがに彼は取りに来た。 それを見てもう半分を上げると頬張る様に食べ始めるハジ。 しかしそこに彼女を迎える車が来る。 しかし気になった彼女はハジを乗せ、とりあえず匿う事にするのだった。
仕事を人生の第一優先と考え、家庭も持たず、離れて暮らす母親のことも煩わしく感じていたキャロルであったが、ハジと出会い、自分の手では世界を何も変えられないことを知る。 せめて目の前の小さな命を守りたいと願い始めたキャロルは、ハジが生き別れた姉弟を捜し出そうと奔走するが…
監督はミシェル・アザナヴィシウス、もちろん代表作は「アーティスト」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11652959.html ですが、その前はパロディ的なスパイ物を撮っているんですね。
今作は、主演にベレニス・ベジョを迎えた戦争ドラマで社会的な作品です。ベジョは「シークレット・オブ・モンスター」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14586739.html が最新出演作品ですが、監督とは 「アーティスト」 でコンビを組んでいて今作で再びですね。 新人女優役から、今作は過酷な戦場におけるEU職員という役割です。
しかし必ず犠牲なっていくのは民間人、今作の言葉を発しなくなったハジを演じたのはアブドゥル・カリム・ママツイエフという少年ですが、彼が本当に素晴らしい。 実に自然な感じで、後半彼が一人で踊るシーンがあるんですが、滑稽に感じるシーンなのに泣けてくるんですね。
そして彼が心を開き始め、言葉を発するところもまた感動なんですが、その裏には彼のキャロルと生きて行こうという彼なりの決心があるんですがね。
そしてこの作品はもう一つドラマが描かれているんですね。 コーリャというロシア側の若い兵士の物語が差し込まれているんですね。 これがまた何とも対照的な現実の戦争の末端の姿を色濃く表しています。
これはぜひ見ておくべき作品ですね。