東日本大震災から5年後の福島県、いわき市。 みゆき(瀧内公美)は、父の修(光石研)と仮設住宅に二人で暮らし、市役所に勤めている。 修は震災までは農家を営んでした。 しかし震災で津波によって妻を亡くし、遺体は結局見つからず、補償金で仮設で暮らしながら、昼はパチンコに通い、仕事を見つけることもしない日々を過ごしていた。
パチンコに行けば同じような補償金で毎日通う仲間もいる。 たまに今後の対応のための集会に行けば、補償金目当てに群がる悪徳商法の輩に騙されそうになる。隣に住む夫婦は、夫が汚染水処理の仕事で家を空け、残された妻は、絶えず罵声の張り紙をされ心休まらない暮らしを強いられていた。
みゆきは週末になると高速バスで東京の渋谷に向かう。 修には英会話教室に通っていると言っているが、彼女はデリヘル嬢をしているのだった。 三浦秀明(高良健吾)という世話役兼ボディガードのもと、顧客もついているそこそこの人気のデリヘル嬢だった。 しかしたまに嫌な客もいて、高圧的な態度で本番を迫ろうとするときは、連絡を受けるとすぐに三浦が助けに来る、彼女にとっては信頼のおける存在だった。
そんなある日、元彼からメールが来る。 久しぶりにいわきに帰ってきたので会いたいというものだった。 待ち合わせ場所に行くみゆきだったが、山本健太(篠原篤)とは震災直後にデートをしていたが、こんな時にデートをしていていいんだろうかという彼の言葉を最後に合わなくなっていた。
福島の市役所に、山崎沙緒里(蓮佛美沙子)という女性がやってきた。 彼女は今は許可なくは入れないある町に行きたいと言ってきた。 申請を出して通ればという対応をしているのが新田勇人(柄本時生)だった。 彼は震災後、家族がバラバラになり、家には弟がいつも留守番をしている家庭になってしまっていた。
まじめな勇人は、津波に流されたり、帰宅困難区域に指定された住人の面倒を見ていた。
みゆき、修、勇人それぞれの震災後の人生が流れているのだった…
震災からもう6年が経っている、早いものだというのか、まだまだだと言うのか。 関東に住んでいると、だんだん昔の出来事に1年1年経つとともに感じてしまいますが、そんなもんでは済まされない現実があるというのがこの作品を観るとよくわかります。
監督は廣木隆一、「きいろいゾウ」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/8509743.html 「100回泣くこと」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/9681451.html 「さよなら歌舞伎町」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/12655325.html と見ていますが、今作は東日本大震災のその後を、正面からテーマにし、監督、自らの原作の映画化ですね。
主演のみゆき役は瀧内公美、「日本で一番悪い奴ら」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14252158.html 「闇金ウシジマくん Part3」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14516480.html に出演しています。
物語は震災によって会社や仕事、田畑、家族を失った被災した方たちのその後の生活をドラマにして描いた作品です。 物はお金をもらえれば買える、生活も豪勢な暮らしをしなければなんとか補償金でやっていける。 でもこの作品に登場するいわきでの暮らしの人たちは、大なり小なり、いまだに心に大きな傷を負ったり、穴が空いてふさがらない人たちばかりでした。
しっかり働いている人、補償金を食いつぶしている人、そしてそれを狙って近づく輩、またおそらく電力会社の社員なんでしょう、汚染水の処理に奔走する人、元にはもう戻らない昔の生活、なんで自分たちがこんな目に遭ってしまったのか、言いようのない叫びをグッと押し殺して生きている、そんな辛く重い作品でした。
しかし、そんな中、なにか前に進みたい、みゆきも勇人も修も、お話の中で何か手探りでも前に進もうという小さな一歩が最後に見れる、少し薄明かりが見えてる、見えてほしいと思う作品でしたね。
主役の瀧内公美さんの体当たりの演技が際立ちますが、なぜデリヘル嬢を自分にやらせたのか? 一番しっかりしている彼女が実は大きな心の闇を抱えていてもがき苦しんでいたという現実があるのかもしれません。