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春との旅

2010年作品、小林政広監督、仲代達矢徳永えり出演。

北海道、4月。 まだ風が土を愛でることのない厳しい寒さの中、元漁師の忠男(仲代達矢)は、18歳の孫・春(徳永えり)と共に気の乗らない東北への旅に出ることになる。 忠男は露骨に嫌がるのだが、ハルは半ば強引に連れて行くのだった。
二人が最初に訪れたのは、忠男の兄・重男(大滝秀治)の家だった。 決して折り合いのよくなかった兄に、忠男は突然、自分を養ってくれと切り出す。 足を痛めている忠男は、ひとり娘が死んでからは春に面倒を見てもらいながら暮らしてきた。 だが、春が仕事を失い、これを機に東京に出ることを考えていると知り、忠男は最後の住まいを求めて重男に会いに来たのだった。
しかし、忠男は重男に同居を断られてしまう。 と同時に、重男と妻の恵子(菅井きん)が抱える事情を忠男は知ることになる。 なぜいちばん折り合いが悪い重男に会いに来たのか? それは一番嫌な兄弟に先に会った方がいいという忠男の判断だと明かすのだった。 その晩20年ぶりに忠男は酒を飲む。
翌日、墓参りを済ませた2人は、毎年届く年賀状の住所を頼りに末っ子の中井幸男の家を訪ねる。 しかしその住所に中井という家はなく、2人は途方に暮れる。 清水という女性が幸男と暮らしていたらしいということまでわかり、その家を訪ねるが留守だった。
次の日、偶然入った食堂で働いていた女性が探していた清水愛子(田中裕子)だとわかる。 愛子の話によると幸男は人の罪をかぶって現在服役中だという。 兄弟の中で一番気の合う幸男の不器用な生き方を忠男は肯定する。
2人は鳴子温泉で旅館を営む長女の市山茂子(淡島千景)を頼っていく。 しっかり者の茂子は甘ったれの忠男をたしなめ “春だけは犠牲にするな” と言う。 子供のいない茂子は春だけここに置いて自分の後継にしたいと申し出るが、春は忠男のことを考え断る。
そして忠男は、最後に弟・ 道男(柄本明)のもとを訪ねようとするのだったが…

監督は小林政広、公開中の 「海辺のリア」 は近場に来た時に鑑賞予定にしています。
主演は仲代達矢、まあ大物俳優さんで言うまでもありませんが、近作はなかなか見る機会がないのですが、どれも彼の演技に引き込まれるのはいつものことですね。
孫役では徳永えり、「犬飼さんちの犬」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/6424243.html  「ハナミズキ」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/6581618.html ですが、今作ではほぼダブル主演ですね。
物語は祖父と孫娘のロードムービーとなって行きますが、これがなかなかシビアな旅になるんですね。 忠男はニシン漁に拘り漁師をしていましたが、元来自分のことしか考えない男でした。 妻を失い、娘を失い、自分も足を悪くして、身の回りの世話をしていたのは孫娘の春。 しかし春も仕事場を失い、いよいよせっぱつまった挙句、彼女は故郷を捨て都会に行く決心をしたんですね。
じゃあ忠男はどうするのか? そのための兄弟を訪ねる旅ですね。 しかし忠男はすこぶる評判の悪い身内のようです。 まあそれは春に対しての態度でわかります。 わがまま放題、正直 “どうしようもない爺” なんですね。 よく今まで春が置き去りにしなかったことか!、ぼけているわけでもなく、自分本位に今まで生きてきた典型的な人間なんですね。
その中で、気丈な姉だけが、ズバッと現状を斬ってくれ、かつ春に対して手を差し伸べてくれます。 しかしそこで春は決心をするんですね。
これはなかなか身につまされるお話でした。 老境に入り、身の置き場、振り方が難しい今の時代、人生の最後をいかに過ごしていくのか? 考えさせられる作品でした。

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慌しく家を出る二人

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忠男の身内を訪ねる旅が始まる

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しかし兄弟たちもそれぞれ事情を抱えていた

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宿泊するホテルも無いときもあった

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そして忠男のことを真剣に考える春

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