anttiorbの映画、映像の世界

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永い言い訳

2016年作品、西川美和監督、本木雅弘主演。

“津村啓” というペンネームでテレビのバラエティなどでも活躍する人気小説家の衣笠幸夫(本木雅弘)は、その日もいつものように髪を妻の夏子(深津絵里)に切ってもらっていた。 彼専用の鋏一式でいつも切ってもらっているのだが、二人の会話は乾いたものだった。
長年連れ添った妻・夏子は、親友のゆき(堀内敬子)とバス旅行に行くのだった。 大きな荷物を持って出ていくとき、言い忘れたようにテレビ収録でのスーツを用意してあるのをしっかりと伝える夏子だった。
彼女が出て行ったのと入れ違いで一人の女性が、やってくる。 幸夫の不倫相手の福永智尋(黒木華)だった。 そう、幸夫と夏子の間は完全に冷えていたのだった。 しかし、幸夫のもとに一本の電話が入る。 山形県警からの電話だった。 それは出かける時の夏子の様子を細かく聞いてくるものだった。 夏子は旅先で突然のバス事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせだ。
すぐに現地に向かい、身元確認をするが、事故に遭い亡くなった人たちの遺留品が置いてある場所に連れて行かれる幸夫。 彼は地元で火葬を済ませ、自宅に戻ってあらためて葬儀を行う段取りをすぐに取ってしまう。
しかし、夏子の美容室の従業員は、そんな冷たい態度の幸夫に怒りをぶつけるが、世間に対しても悲劇の主人公を装い、涙を流すことすらできなかった幸夫だった。 事故で亡くなった人たちの遺族の説明会が行われた。 そこで同じように妻を亡くした男がバス会社側に声を上げる。 彼は夏子の親友で同じ事故で亡くなったゆきの遺族であるトラック運転手の大宮陽一(竹原ピストル)だった。
幸夫を見つけると大宮はすぐに近づいてきて、同じ悲しみを持った者通し手を握ってくるのだったが、そこを報道陣にフラッシュをたかれ、表情のない顔をする幸夫だった。
「幸夫君とやっと会えた…」 大宮はそういうのだが、幸夫の心はなにかどんよりとしたままだったのだが…

西川美和監督作品は、近年多く見ています。 「夢売るふたり」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/9478623.html 「ディア・ドクター」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/5055218.html 「ゆれる」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11419472.html どの作品も、主人公の心の内を抉るような作品が多く、見た後、結構重しを置かれるような感じがします。でも、見なければという思いになる監督ですね。
原作を書く小説家であり、脚本も手掛ける一貫した作品作りができる珍しい才能の持ち主ですね。 だから、映像化したときにぶれがない感じがします。
主演は本木雅弘、最近の出演作品は 「天空の蜂」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/13457666.html でしたし印象に残る出演作品も多いです。「おくりびと」 なんかとくに印象深かったですが。
今作では、新作をあまり書けなくなった小説家 “津村啓” こと衣笠幸夫役でしたね。 あの偉大なプロ野球選手と同姓同名、字こそ違いますが、監督が広島出身でカープファンという事でこの名前にしたらしいですが。
夫婦仲が冷え、本業の小説家からコメンテーターをこなすようになって、書けなくなっている小説家、この作品は、突然失った家族に対しての、それも子供がいない二人きりの妻を失ってからの彼の思考、行動が大きな物語の展開になっていくんですね。
大宮家と交流を持っていくことになりますが、そこの息子と、娘、子供がいない幸夫は、はじめおっかなびっくり二人と接していきますが、甲殻類アレルギーで、病院に娘が担ぎ込まれることから、この家族との交流が強くなっていきます。 普通の人間らしい姿が垣間見える? 物語はそう簡単には行きませんが。
大宮家の息子・真平( 藤田健心)は、どことなく考え方が、幸夫と似ているところがありますし、どこかで幸夫に憧れているのかもしれません。
どんなに、冷えていても夫婦だった人間が突然いなくなる、当たり前のように心に大きな穴が開きますよね。 人それぞれそれを一生懸命いろんな方法で埋めようとします。
幸夫にとっては、それが大宮家になっていくんですが、もしかしたらそれでは埋まらないという事を幸夫は初めからわかっていた。 ただやらなければ自分がおかしくなってしまうだろう、必死さも感じました。
ある部分ではわかるし、ある部分では納得できない作品でしたね。

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妻が旅行に行くとすぐに愛人が来る

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しかし旅先で妻が亡くなり

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大宮は妻から入ったメッセージを保存し聞いていた

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津村啓の担当の岸本

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大宮と出会い、留守の間見ることになる幸夫

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