2016年作品、アマンダ・シェーネル監督、レーネ・セシリア・スパルロク主演。
ホテルでは他の観光客と同席になった。 ホテルのレストランの窓は大きくて外の景色もよく見えた。 と、そこへサーミ人たちのバイクの音が聞こえてきた。
観光客たちは、「サーミ人はどこでもバイクで乗りつけてくる。」 「自然とともに生きる人たちかと思ったのに。」 と非難していた。
クリスティーナはそうだと言わんばかりに聞いている。
息子と孫娘が、放牧地のトナカイを見に行くため、ヘリコプターで出掛けるのが見えた。 その様子をホテルの部屋の窓からぼんやりと見ているクリスティーナ。
しかしその光景を眺めながら、彼女は自分の幼き頃を思い浮かべていた。
1930年。 クリスティーナがまだエレ・マリャ(レーネ・セシリア・スパルロク)の名前であった頃、妹のニェンナ(ミーア・エリカ・スパルロク)と寄宿学校に入ることになっていた。
学校での日々は屈辱と恐怖でしかなかった。 それでもエレ・マリャはとても優秀な生徒だった。 教師になりたいと思っていたエレ・マリャはある日女教師(ハンナ・アルストロム)に、自分は首都の高校へ行って勉強をしたいと申し出る。 だが、その女教師はサーミ人の脳みそは小さくて人の役に立てず、文明に対応できない。 街に出れば絶滅する、と言われてしまう。
やがて仲が良かった妹も冷たい態度を取るようになる。
女教師の名前クリスティーナと語り、裕福な青年ニコラス(ユリウス・フレイシャンデル)と出会う。 初めてのダンス、初めてのキス。 夢のような一時だった。
エレ・マリャは、トナカイを飼いながらテントで暮らしている。 そして彼女は今の生活から抜け出す決意をするのだった…
主演の若いエレ・マリャを演じるのがレーネ・セシリア・スパルロク、ノルウェーのセーミ人という事でトナカイを飼っている生活をしていますが、セーミ語を話せる女優を探していた女優という事で監督に見いだされ、実の妹とともに今作に出演が決まったようです。
そもそもサーミ人とは? スウェーデンに限ったところではなく、ノルウェー、ロシア、フィンランドといった北欧系に分布している狩猟・遊牧を行なう民族だったようですね。 でもいまは、ほとんどのサーミは定住生活を営んでいると言われています。
物語は、そんなサーミ人たちが味わってきた差別との戦いのお話を、クリスティーナ=エレ・マリャの体験談のように描かれていきます。 一番、優秀だったマリャでしたが、そもそも脳みその構造が劣っていると決めつけられ、一列に並ばされ、裸にされ、寸法を測るという差別のシーンもあります。
今だったら考えづらいことですが、20世紀前半はそんなことがまかり通っていた、いや人間の奥底に今でも潜む固定観念かもしれませんね。
彼女はそこから逃れるため家を出ます。 そこで頼ったのがダンスパーティーで出会った青年でした。 しかしそこも追い出され、行きついた場所はある学校の図書館、そして生徒と間違えられたことからこの学校に入ることになるんですが。
映画で語られるのは、ほんの彼女の旅立ちの直前まで、この後の彼女の歩んだ人生は、老齢となっらクリスティーナの姿から推察されます。
どんな苦労があったのか? どんな差別に耐えたのか? 彼女はサーミを憎むまでになってしまうんですが、実はそれは大きな愛に対する相反した感情なんですね。
またひとつ映画から学ばせて頂いた作品でした。