天保12年、老中水野忠邦の改革により、倹約令が敷かれる。 一切の娯楽が禁じられ、今日も女性だけの旅役者たちが捕えられ、引き回しとなっている。 医者見習い兼駆出しの戯作者・信次郎(大泉洋)はそこを通りかかった時、我慢が出来ず大声で、幕府のやり方を批判して、役人に追っかけられてしまう。
お吟(満島ひかり)は日本橋の唐物問屋・堀切屋三郎衛門(堤真一)の情婦、でも店を切り盛りしていても、みんなからはおかみさんとは呼ばれない。 古本卸の女(高畑淳子)は、本を持ち込みながら、曲亭馬琴(山崎努)の“八犬伝”が完成するのかという話をしている。 大作なのでみんなが期待しているが、高齢のため筆が進まず、さらにこの改革で幕府から絶えず監視されているという。
その日、お吟はいつものように堀切屋の宴席に顔を出した後、一人と忽然と消えてしまう。
じょご(戸田恵梨香)は、浜鉄屋の重藏(武田真治)の女房。 そして鉄練りにかけては大変腕がいい、鉄火場を仕切っている。 しかし重藏は仕事もせず放蕩三昧、じょごの前でも平気で女を抱いている。 そしてとうとう我慢できずに、彼女は地蔵にある願掛けをする。
女性の地位が低いこの時代、水野忠邦の改革も相まって女性に対して今まで以上の締め付けが行われていた時を感じさせられます。 いきなり、女性が綱に縛られ、罪人として歩かされます。
そしてこのお話の中心は東慶寺、ここで2年間辛抱すれば女性の方から夫に別れを認めさせることができる。 逆に言うと女性に選択権が無いんですよね。
大概ここに駆け込んでくる女性は、何かしら夫に原因があります。 時を同じくして女武士の内山理名演じる戸賀崎ゆうもここに駆け込みますが、彼女の理由はちょっと違う仇討でした。 もちろん仇討 の助太刀は東慶寺は請け負いません。 しかし東慶寺に駆け込む理由がちゃんとありました。
柏屋の源兵衛は女主人なんですね。 樹木希林さんは原田監督の 「わが母の記」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/8817494.html で大変評価を受け、監督作品には欠かせませんね。 今回も重要な役どころでした。
主だった主要な登場人物は、大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、ちゃんとおさまっていて素晴らしいのですが、けっこう肝になる人物は東慶寺の法秀尼役の陽月華でしたね。 彼女の毅然とした演技がこの難しい設定をしっかりした感じに仕上げていたのでは?
また法秀尼自体の設定も、彼女がこの寺に来て、東慶寺がしっかりと役目を果たす寺となった重要人物として作られています。
邦画ならではの設定、そしてスッキリした作り、間延びしたところが無く長さを感じない見事な作品でした。
役人を冷やかす信次郎