東京・銀座の地下にある鮨店『すきやばし次郎』は、たった10席ほどの小さな店である。 しかし、世界で最も高齢の料理人としてギネス認定も受けている店主・小野二郎は、87歳の今でも職と技に対するこだわりを持ち、彼の握る鮨は『ミシュランガイド東京』において5年連続で最高の3つ星の名誉を獲得している。 フランス料理最高シェフのジョエル・ロブションや、ヒュー・ジャックマン、ケイティ・ペリーといったハリウッドセレブなど、世界中の食通たちをうならせてきた。
日本人も忘れかけた二郎の仕事に対する誠実な姿勢、親子であり師弟でもある2人の息子禎一と隆士を通じ て描かれる偉大な父への敬意、そして葛藤。世界が認める名店を支える者たちのプライドと仕事にかける情熱を、温かくもモダンな映像と、クラシック音楽の旋律に乗せて美しく描いていく・・・
映画を観ていく中で、ドキュメンタリー作品を観たくなる時があるんですね。 私が見たくなるのは、大自然ものではなく、人間に触れた物は興味があります。
今までも書庫にあるのは主に人物に視点を当てた物ですし、唯一「アクト・オブ・キリング」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11982535.html が一応人物ですが、それ以上に政治体制に視点が多くあたっていました。
こちらのお店は、オバマ大統領が来日した時、安倍首相が連れて行ったお寿司屋さんとしてい一躍大々的に有名になりましたが、もう知る人ぞ知る店だったんですね。 私なんかの行ける店では到底ありません(^^)
冒頭、ちょっと若いふつうのお兄ちゃんが店に来るシーンがそれを物語っています。 長男の禎一氏が店の説明をするところですね。
「うちはお酒はありません。 お寿司だけです。 一人3万円からです。 その日の仕入れによって多少価格は変わります。 おつまみもありません。」
このシーンで?敷居が高いのかな?と誰しも思うでしょう。 でも “職人とは?”が徹底的に描かれるこの後からだんだん 「そうなんだろうなあ」 と思わせられます。
ここでの修行、仕事の覚え方、仕込み方、海苔の焼き方、卵焼き“玉”の作り方、そして仕入、徹底的に描かれているのは向上心でした。
当時85歳の二郎氏、全くの現役、 もちろん仕込みとかは弟子たち、若い職人たちがやり、主に仕込むのは長男の禎一氏ですが、そこまで教えてきたのは二郎氏なんですから、最後に握るのは彼、そして店主として決めるのも彼なんですね。
“今日より明日”いまだにこれを日々考えている。
次男の隆士氏は六本木に支店を出しています。 おそらく本店は長男が継ぐので、次男はいち早く独立させたんでしょう。
彼には 「六本木で死んで来い」 と言って送り 出したと言います。 もちろん、二郎氏にはお墨付きを出していたんですが、自分の通った道を息子も歩ませているんですね。
このシーンは意外に深いことを言っています。 わたしもついつい息子に甘くなってしまいますが、こういうセリフが言えるのが本当の愛情なのかな?そう思いますし、そう言えるために何ができるのか?そう考えさせられた強烈なシーンでした。
こういう作品を撮ったデヴィッド・ゲルブは父親がメトロポリタン・オペラ総裁のピーター・ゲルブ氏。
南カリフォルニア大学映画制作過程を卒業後、ミュージックビデオ、短編映画、ドキュメンタリーに取り組んでいますが、日本人とはちょっと違った視点と、忠実さが感じられ、なかなかいい仕上がりでぐっと来た作品でした。