銀の匙 Silver Spoon - anttiorbの映画、映像の世界

2014年作品、吉田恵輔監督、中島健人、広瀬アリス出演。

中高一貫の中学に通う八軒勇吾（中島健人）、ここは有名な進学校だった。　同級生は皆ライバル、教師もそれを煽るような授業をする。　勇吾は大きな焦りを感じていた。　次々と問題を解いて手をあげるクラスメートたち、そして勇吾はある決心をした。

中学3年生で、進学を決める時期、父・数正（吹越満）と母・美沙子に彼が出した答えは、大蝦夷農業高校進学だった。　中高一貫の進学校を辞め、どうして農業高校へ行くのか？父は言う　「お前逃げるのか？逃げるんなら今後お前にもう期待はしない」

通称エゾノーと言われる全寮制の高校で、クラスで自己紹介が始まった。　駒場一郎（市川知宏）は家が酪農をやっている。　ここでは野球部に入る予定。　稲田多摩子は将来家を大規模農家にして発展を目指している。　皆家が何等か農業に携わっている者ばかりで、ほとんどがその家を継ぐ生徒ばかりだった。

担任の中島先生（中村獅童）から出身校と将来の夢を言えと言われた勇吾だが、進学校から来て、そして将来の夢も無い勇吾は変わった目で見られたのだった。

広大な、敷地を持つエゾノー、ちょっと校庭に行くのにも８ｋｍ走っていかねばならない。　早速豚の世話を割り当てられた勇吾、一匹の豚が気に入り“ブタドン”というあだ名をつけ可愛がろうとするが、大きくなったらすぐ出荷だと富士先生（吹石一恵）に言われる。

部活をまだ決めていない勇吾に、クラスで一番やさし、く勇吾を何かと面倒を見てくれる御影アキ（広瀬アリス）が乗馬をやらないかと誘ってくれた。　アキの事を気に入っていた勇吾は早速入ることに決める。　

そして夏休みが来た。　実家に帰りたくない勇吾はアキに、夏の間うちに来ないかと誘われるのだった。　どうして？　嬉しいがちゃんとそれには理由があった。　父の豪志（竹内力）がヘルニアで手術を受けるから手伝ってほしいというのだった。　そしてバイト代も出すと言う。　学校にいるよりいいと思いそれを受ける勇吾。　そして夏休みに入った…

映画のいいところは、自分がおそらく一生体験しないであろうことが、スクリーンを通して味わえると言うことですね。

農業高校、そして北海道という環境は、おそらく絶対体験できない世界でした。　主人公は進学校から来た八軒勇吾、だから彼の目で描かれているので新鮮なのと、入学してきた生徒たちはしっかりとここから将来を見つめているんですね。

実家が酪農をしている、農業をしている、そんな子供たちは自然と家を継ぐと言う考えになったいます。　もちろん夢を持っている子たちもいるんですが、それよりも親の苦労を見ているから強い責任感が養われています。　そして厳しい現実も。

一番やさしくおっとりとしている御影アキも、辛いラストシーンでしっかりと言い切って別れを言うところはぐっときましたね。

日本の農業、そして北海道の農業の切実な問題点も描かれており、しかしその中で将来をしっかり見つめる若い者たちの姿は清々しく、逞しくもありました。　原作はコミックで、アニメとなりそして実写映画という流れですが、これはアニメも見たくなる作品でした。　爽やかに描かれている青春映画でしたね。