anttiorbの映画、映像の世界

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人間の値打ち

2013年作品、パオロ・ヴィルズィ監督、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ、マティルデ・ジョリ出演。

パーティーの後片付けが進んでいく。 宴が終わった後の食べ残しを集め、皿を回収し、車に詰める仕事をする中、ウエイターの男は早く来たので、せっかくのクリスマスイヴを早めに家族のもとに変えるため自転車で帰路に就く。
しかし途中の道で後続の車に煽られているときに、対向車が来てしまい接触、彼は跳ね飛ばされ、道路脇に転落してしまった。
その半年前のこと、イタリア・ミラノ郊外。 町で小さな不動産屋を営むディーノ(ファブリツィオ・ベンティボリオ)は娘のセレーナ(マティルデ・ジョリ)、後妻で心療内科医のロベルタ(ヴァレリア・ゴリノ)と暮らしている。 
ある日、ディーノは富豪のボーイフレンドの家に遊びに出かける娘を送り届ける。 そして、屋敷の主人であるジョヴァンニ・ベルナスキ(ファブリツィオ・ジフーニ)がテニスをしているのを見つける。 学生時代テニスをしていた彼は、サーブが上手く、ジョバンニとペアを組み連勝した。 
テニスのペアとして認められたディーノは上手く彼に近づき、ベルナスキが手がける投資ファンドの利回りを聞きつけ、ファンドへの参加をほのめかす。 出資金額は総資産 の20%以下が出資の条件であるにも関わらず、一攫千金を目論んだディーノは銀行から70万ユーロもの大金を借り、ファンドに参加する。
ベルナスキの妻・カルラ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)は何不自由ない生活を送っているが、夫からはアクセサリーのように扱われ、自分の居場所を見出せず空虚な日々を送っていた。 ある日、カルラは町にある唯一の劇場が老朽化のため取り壊されそうになっているのを知ると、再建のための出資を夫に頼み、劇作家や評論家を巻き込んで自ら運営委員会を立ち上げる。
金持ちの子女が集まる高校に通うセレーナは、ボーイフレンドはジョバンニの息子のマッシミリアーノ(グリエルモ・ピネッリ)だが、そろそろうまく行かなくなりただのクラスメイトになることになっている。 
そんなある日、継母ロベルタの勤務先で不思議な少年と出会う。 彼はルカ・アンブロジーニ (ジョヴァンニ・アンサルド)といい、ちょっとエキゾチックな感じで、ロベルタを待っている間に似顔絵をスケッチしてくれる。 カウンセリングを待っている心を病んだ少年には見えないルカ。 ここに来る子供たちは心の病気を持った人間がほとんどだが、どうして彼が来ているのかが不思議だった。
それから半年後のクリスマスイヴ前夜。 マッシたちとつるんでいたセレーナは、店の窓に蝙蝠を書いているバイトをしているルカと再び会い声をかける。 彼は大麻を持って捕まったのだった。 しかしそれは彼の物ではなかったが、どうせ誰も信じてくれない、彼は自分の罪だと言い、そのためにカウンセリングを受けていると話してくれる。
彼の無実、そして優しさにセレーナは惹かれて行くのだった。
しかし一件のひき逃げ事故が起こる。 それをきっかけに、ディーノ、カルラ、セレーナの思惑と欲望が明らかになっていく・・・

監督はパオロ・ヴィルズィ、私は初鑑賞の監督です。 日本未公開の作品が4作ありますが、今作が日本の劇場に初めてかかったようですね。
4つのパートから成り立っていて、各パートに一人スポットを当てています。 始めはディーの役のファブリツィオ・ベンティボリオに。 「ブルーノの幸せガイド」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/9516788.html で主役を務めていますね。 第2章はカルラ役のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、彼女は 「アスファルト」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14403302.html で看護師役をしていました。 今作とは全く違う影のある役でしたね。
そして第3章は若手のマティルデ・ジョリ、ディーノの娘役でした。 なんと彼女はこれがデビュー作品、レベルの高い演技を見せてくれます。 彼女は注目です。
物語は冒頭の接触事故シーンが最後大きな問題にまで膨れ上がって行くんですが、ここでしっかりとした対応をしなかったことに、物語に尾ひれがついて行きますし、それぞれの生き方に変化が訪れて行くんですね。
上手いのは、ある視点では見えなかった人物の考えや欲望、好き嫌いが、誰を中心に置くかで見方がガラッと変わるという面白い手法ですね。 一見うまく行ってそうな夫婦、カップルが実は全く違う内面性を持っていたり、悩みを抱えていなそうな人が暗くよどんでいたり、また逆にまわりから疎まれている人間が、実は綺麗な心を持っていたり。
そしてこの作品、原題の 「L CAPITALE UMANO/HUMAN CAPITAL 」 をほぼ直訳にしています。 固く訳すると “人的資本” とでもいうんでしょうが、その訳はエンドロールで明かされます。
実に上手い映画作りをしたなあという監督でした。(G)

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ディーノとカウンセラーの妻・ロベルタ

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娘のセリーナノBFの父・ジョバンニと

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ジョバンニの妻・カルラ

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しかし彼女も劇場の再建がうまく行かなくなる

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ルカの事で思い悩むセリーナ

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