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塀の中のジュリアス・シーザー

2012年作品、パオロ・タヴィアーニヴィットリオ・タヴィアーニ監督、コジーモ・レーガ、サルヴァトーレ・ストリアノ、ジョヴァンニ・アルクーリ出演。

舞台上で、シェイクスピアの 「ジュリアス・シーザー」 が演じられている。 終幕に近いクライマックス、第5幕第5場。 そして終演。 舞台上に全キャストが集まり挨拶する。
観客はスタンディング・オベイションで大きな拍手を送る。 観客席がはけて、照明も消され、俳優たちが引き上げていく。 満足そうに演じ切った充実感で引き上げる役者たち、だが、彼らは個室に入っていく。 ここは刑務所だった。 6か月前の事だった。
ローマ郊外にあるレビッピア刑務所。 施設の一角では重犯罪を犯した服役囚を収容している。 刑務所では、囚人たちによる演劇実習が定期的に行われている。 
毎年様々な演目を囚人たちが演じ、所内劇場で一般の観客相手にお披露目するのだ。 指導しているのは演出家ファビオ・カヴァッリ、今年は 「ジュリアス・シーザー」に決まり、早速、俳優のオーディションが始まる。
ファビオは各応募者に氏名、誕生日、出生地、父親の名前を二通りの言い方で言わせることにした。 一つ目は、国境で、奥さんに泣いて別れを惜しみながら。 二つ目は、強制的に言わせられているように。
最初は哀しみを、次は怒りを表現する、という注文をつけたのだった。 その結果、シーザーに、麻薬売買で刑期17年のアルクーリ。 キャシアスに、累犯及び殺人で終身刑、所内のヴェテラン俳優であるレーガ。 ブルータスに、組織犯罪で刑期14年6ヶ月のストリアーノ、といったように配役が決まっていった。
しかし舞台を使った練習などそう簡単にはできない。 そこで刑務所内の各所で稽古が始まったのだった。 あらゆる場所で・・・

冒頭だけ見ると、どこの劇団の公演なのかと思うほどですが、これが実際の囚人たちが演じているとは。 76分の短い作品ですが、冒頭の劇のエンディングから、実際の房に帰るシーンがショッキングですね。 
あまり舞台監督のファビオは細かく演技指導はしません。 始めの方こそ指示を出しますが、途中からもう演じる囚人たちが完全に劇中の各々のキャラに同化していってしまいます。 またキャストとして選ばれなかった者たちもローマの住人に、そして監視する所員も彼らの練習=演劇に引き込まれていきます。 この迫力が凄いんです。
大まかな物語は分かりますが、なかなか全編見る機会が無い戯曲ですが、スクリーンを通して伝わってくる迫力に途中からただ圧倒されました。 終身刑の者たちも結構いますが、これを演じることで、没頭することで、何か自身が変わっていくんではないのか、そんなことを思わせる不思議な空間を味わった作品でした。(G)

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迫真の舞台


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所内各所で始まる稽古


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クライマックスシーンの稽古

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ハイライトシーン

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舞台上に

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