anttiorbの映画、映像の世界

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渾身 KON-SHIN

2013年作品、錦織良成監督、伊藤歩、青柳翔出演。

島根県隠岐諸島の島で生まれ育った多美子(伊藤歩)は娘の琴世を寝かしつけていた。 琴世は実の娘ではない。 坂本英明(青柳翔)と前妻の麻里(中村麻美)の子で、麻里は小さいころからの親友であった。
実は英明は別の女性と結婚するはずだったのだが、ドタキャンしてと麻里と結婚したのだった。 島の世界は小さな世界、島にいることはできず二人は追われるように島を出た。 しかし英明は島に戻ることを決め、島の両親を訪ねた。 しかし父・学(高橋長英)は決して彼を許さなかった。 そして二人の孤独な生活が始まった。
しかしそんな二人の勇気を認める者もいた。 それが多美子であり、そして彼が始めた相撲の仲間であった。
隠岐諸島に古くから20年に一度開催されてきた古典相撲があった。 それに参加することで英明は自分に対する禊としようとしているかのようだった。 職場もなかなか決まらない英明。 それは彼のした行いを良しとしない島民が多くいるからであった。 そんな中でも多美子の母・吉野弓子(宮崎美子)の紹介で、漁師の仕事にありつけた。
麻里もパートをしだしたそんなある日、妊娠がわかった。 そして生まれたのが琴世だった。 娘が生まれて海の見える家に引っ越した英明は、仕事に、相撲に励むのであった。 しかし運命は彼にまだ試練を与えるのだった。 妻の病気がわかったのだった。 すでに進行していると医者に言われ、ほどなく妻は他界した。
失意に沈む英明だが、彼を何とか励まそうとする周りの人たち、そして多美子。 でも一番の励みは琴世だった。 娘のためにもう一度立ち上がろうとする英明だった…
 
「相撲でこんなに感動するとは」 という謳い文句の作品ですが、その通り相撲の対決シーンがたっぷりと盛り込まれています。 でも相撲に勝つことが目標のようでそうではない作品ですね。
初めに結婚するはずだった女性は出てきませんし、麻里の病名も明かされません。でもそれは見ている方が想像することによって、より深く入っていける出来となっています。
相撲とは神事なんだ、それに参加することは神に仕えることなんだ。 土俵に対する畏敬の念、開始すぐにその厳かな儀式のシーンがありますが、ちょっとこのシーンは荘厳でしたね。 伝統といいますか、昔から行われてきた行事なんでしょうが、神聖なものに命かけて向う力士たち。 それを支える女たち、島の住民。 何か言いようのない人と人のつながりの太さを感じる作品でした。
もちろんこの島の人も日々の生活があるんでしょうが、20年に一度の神事に対する並々ならぬ意気込みが、一体感が伝わってくる驚きの作品でした。
錦織監督は 「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」 http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/1676974.html を観ましたが、これもまた感動のいい作品です。 キャストも重厚で、ミスのない良い俳優陣の配置でした。
あまり上映館が少ないようですが、他の作品に負けない良質な出来でした。

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20年に一度の神事

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英明の数少ない島の理解者

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残された娘のため

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大一番に向かう英明

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二人を支える多美子

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