終戦から一年たった、昭和二十一年九月下旬、戦地から帰国の途中、引き揚げ船の中で死亡した鬼頭千万太（武田洋和）の遺書を、私立探偵・金田一耕助が友人から預り、獄門島の千光寺・了然和尚（佐分利信）へ届けにきた。
「死にたくない。おれが帰ってやらないと、三人の妹たちが殺される」 その本鬼頭の月代（浅野ゆう子）、雪枝（中村七枝子）、花子（一ノ瀬康子）の三姉妹は千万太と異母兄妹で、いまは座敷牢に入れられている当主・与三松（内藤武敏）と後妻・お小夜（草笛光子）の間に生まれた子供たちだが、千万太の亡祖父・嘉右衛門（東野英治郎）は、旅芸人だったお小夜と与三松の再婚には、死ぬまで徹底的に反対した。
金田一耕助が島へきて三日目に行なわれた千万太の通夜の日に、第一の殺人事件が起こる。 死んだ嘉右衛門の妾で、いまは本鬼頭で女中のように働いている勝野（司葉子）が 、三姉妹の着替えを終えた直後、三女・花子の姿が消えた。その夜、千光寺の梅の古木に自分のしめていた帯で逆さ吊りにされた花子の死体がみつかる。
現場へ駆付けた千万太のいとこの早苗（大原麗子）は、逆さ吊りにされている花子の懐から一通の封筒が落ちるのを見つける。 それは、対立している分鬼頭家・儀兵衛（大滝秀治）の後妻・巴（太地喜和子）が、月代宛に書かせたものだった。
「鴬の身をさかさまに初音かな」 「むざんやな冑の下のきりぎりす」 「一つ家に遊女も寝たり萩と月」。
その間隙をぬうようにして、無残な第二の殺人事件が起こる。 次女の雪枝が、海に向って天狗の鼻のようにつきでた崖の上に置かれている千光寺の吊り鐘の中で死体となって発見されたのだった・・・
石坂・金田一シリーズの第３弾はこの作品でした。
今回の作品では、司葉子、大原麗子が出演。 そして獄門島を実施的に仕切っている３人の重鎮で、佐分利信、松村達雄、稲葉義男が出演しています。 そして面白いのは、加藤武の役が今作品でようやく、等々力警部として固定されるんですね。
同じキャラなんですが、実は毎回違う役という面白い存在でしたが、そろそろしっかりと既存の原作キャラに落ち着くって感じですね。
物語は今回も狙われるのが３人の娘たち、そしてその殺人は予言されているんですね。 そして妹のことを託して死んでいった兄の遺書を持って現われるのが金田一耕助ということでした。
若いころ私はこの作品を見るとき、優秀な探偵が後から登場するのではなく、ほぼ初めからいるのにどんどん殺人事件が起こってしまう、何かもやもやしたものを感じていました。
しかし、彼にも防げない、何か運命のあや、因縁、恨み、妬みなど渦巻き、絡まっているどうしようもない流れがだんだんわかってくると、逆に面白く感じてくるようになりました。
横溝作品は、ある意味ホラー作品ですので、いちばん怖いのが人間の情念、そんなことを感じるシリーズですね。
