市場原理によってメディアが社会の合わせ鏡となるなら、このゴーストライター騒動は、社会全体が安易な二極化を求めていることの兆候と見ることもできる。 はたして本当のことは何なのか? 誰が誰を騙しているのか?
映画はこの社会にはびこる時代の病をあぶり出しながら、12分間の衝撃のラストへとなだれ込む・・・
劇場公開時は、大変な混雑と、上映館の少なさで結局鑑賞できなかったこの作品、ようやくCSで放送されましたが、今作は “ディレクターズカット版” という事でした。
監督は森達也、実は映画作品は私は見た事がないんですね。 ぜひ見たいのが「A」 「A2」 なんですが、まだ未見です。
この事件というか騒動は、大変話題になりました。 “ゴーストライター問題”、私も気が付くと佐村河内氏の音楽作品で 「鬼武者」 はゲームをしていました。 また、映画作品でも 「桜、ふたたびの加奈子」 https://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/14908440.html は鑑賞しましたから、今作はその当事者の一方である佐村河内氏に密着をするという事に対しても興味が湧きますね。
カメラは自宅においての密着の形式をとっています。 あまり外に出ない佐村河内氏ですが、絶えず付き添っているのが奥様なんですね。 監督からの質問を絶えず手話で伝える役目、いろんなドキュメンタリーで取り上げられてきましたが、奥様が写るシーンは今までほとんどなかったにもかかわらず、今作では、ほぼずっと映っています。 まあそれだけ森監督は信頼されていたってことなのかもしれません。
閉鎖空間で、さらに部屋を暗くした中での映画ですが、彼のところにはいろんなオファー、出演依頼が来るんですね。 一応そのオファーに対し、どういった条件なのか耳を傾ける夫妻。
海外からの取材もありました。 日本のメディアは、はれ物に触る感じで行儀よく依頼をしますが、海外メディアは痛いところを真っ直ぐに質問してきます。 さらに監督は、相手方の新垣氏の出版サイン会にも突撃していきます。
“森達也” という名前を聞いた時、一瞬困った顔、恐れの顔をする新垣氏。 佐村河内氏陣営だという事をしっかり認識しているんですね。
どこが “ディレクターズカット” なのかという事に、放送後の監督インタビューで語られていますが、そこは目の不自由な少女が出るシーンだという事でした。 公開時には未成年だったので、凄く訴えるカットでしたが、泣く泣く公開時には落としたシーンでしたが、今はもう成人をして本人の了解も得て今回はそこを使ったという事でした。
見どころはやはりラストでしょう。 音楽活動をしなくなり、森氏が佐村河内氏に作曲をするよう強く希望し、その後彼が再び創作をするところですね。 さらにラストカットでの、謎の沈黙。この 「FAKE」 という題名に何故したのか? そもそもテレビとは、マスコミとは、映画とは、という監督自身の見る側への強烈な訴えかけに繋がっているという事らしいですね。
改めてあの騒動はなんだったのか? 佐村河内氏の見えなかった部分と、新垣氏の隠された部分が多少わかったような感じのドキュメンタリー作品でした。
渦中の人だった佐村河内氏
監督は彼に密着する
彼に付き添う奥様
愛猫
海外からの取材も
タバコは監督とベランダで