2016年作品、スティーヴン・ホプキンス監督、ステファン・ジェームズ主演。
出発する日、母は彼のために仕立てた綺麗なブレザーを着させるのだった。
「あなたがこの家で初めて大学に通うから」 そう言って袖を通させてくれる母。 そして父に挨拶に行くジェシーは、父にこっそりと手紙と紙幣を渡すのだった。 家計を思いやる息子だった。
そして彼がオハイオ行のバス停前で、ちょっと寄り道をし始める。 そこには彼のフィアンセのルース・ソロモン (シャニース・バントン)と娘がいるのだった。美容院で仕事をしている彼女にも少額のお金を渡し、大学では勉強と、練習と、バイトをしながらお金を送ることを約束するジェシーだった。
オハイオ大学の陸上部は、苦戦をしていた。 コーチのラリー・スナイダー(ジェイソン・サダイキス)は、何とか才能あふれる選手を見つけようと躍起になっていたが、なかなかいい選手は入ってこなかった。 このままでは彼の立場も危うくなりそうなそんな時、ジェシーが来たのだった。
ラリーは、ジェシーに練習のことだけ考えろ、 俺についてくれば必ずトップになれると言う。 そして記録よりも勝つことを考えろと言うのだった。
しかしジェシーは約束をした練習に来れずにいた。 それはルースと娘のためにお金を稼がなくてはならないからだった。 そのことを知らなかったラリーは、彼を職員扱いにして給料を出す配慮をするのだった。
この公開もまさに今ならではでしたね。 この作品は、正直書きたいことがいっぱいありますが、それよりもこの作品は見てほしい。
黒人の偉大なり陸上選手・ジェシー・オーエン スの伝記ドラマと言うだけでなく、ナチが行った差別、それがホロコーストに繋がる前夜を描いているだけでなく、アメリカさえも行っていた黒人差別、その両面が色濃く描かれているからですね。
彼が参加した競技大会で、45分間に5つの世界記録をこの後まず打ち立て、あっという間に全米で有名人になっていきます。 でもそうなると、いろんな人間、マスコミ、そして女性が言い寄ってくるんですね。
また一方、アメリカがオリンピックに参加するかどうかも最後まで揺れるんですね。その部分では、ジェレミー・アイアンズ演じるアベリー・ブランデージがなんとかアメリカを参加させるため、何度もドイツに渡りゲッペルスと、そしてその記録映画を撮っていた女性監督のカリス・ファン・ハウテン演じるレニ・リーフェンシュタールとコンタクトを取ります。 ゲッペルス役はバーナビー・メッチェラート、冷酷な演技でしたね。
あらゆる困難を乗り越え、4冠を取ったジェシー・オーエンス、しかしこの4冠にもまたドラマがありました。
この作品を見て、当時は、特にこのベルリン大会は波乱に満ちていましたね。 いま行われているリオ五輪も、難民の問題、ドーピング 問題で揺れていますが、政治との関連性と、人種差別、迫害があからさまに行われていた当時は大嵐の中のオリンピックだったことがわかります。
純粋に、健全にスポーツの祭典になることを今後も願いたくなる作品でした。