anttiorbの映画、映像の世界

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ディーパンの闘い

2015年作品、ジャック・オーディアール監督、アントニーターサン・ジェスターサン主演。

戦下のスリランカ、ヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)という女性が必死に女の子に声をかけていた。 「親はいるの?」 どうやら親のいない女の子を手当たり次第に、声をかけて探しているのだった。
テントも無く、野ざらしの4人の中の9歳の女の子は、その家族の親せきで、両親は死んでしまったという事だった。 少女はイラヤル(カラウタヤニ・ヴィナシタンビ)といい、ヤリニはすぐにあるところに連れて行く。
そこにいたのは、元兵士ディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)だった。 彼は国外脱出するため、赤の他人の女と娘を募っていて、この二人が選ばれたのだった。 3人は偽装家族となり、難民審査を通り抜けると、早速国外に。
そして3人が着いたのは、フランスだった。 初めはいかがわしいアクセサリーを、売りつけて生計を立てていたのだが、もぐりの業者なのですぐに警察に追われてしまう。
しかし仲介者のヨセフ(マーク・ジンガ)の手配で、3人はパリ郊外の集合団地の一室に腰を落ち着けることができた。 そして、ディーパンは団地の管理人の職を得る。そして、イラヤルは学校に通うこともできる。 カタコトだが、フランス語を話せるのはイラヤルだけ。 彼女は更に学校でフランス語をもっと話せるクラスに入れられるが、いきなり来た異国で、彼女は寂しさと、怖さですぐにディーパンに泣きついてきてしまう。
また、ヤリニは子供を持ったことが無く、いきなり母親役をやらされ戸惑っているのだった。 その態度にイラヤルは彼女に不満をぶつけるのだった。 
生活は苦しく、ディーパンは、ヤリニにも働いて欲しいというが、言葉に自信が無い彼女は外に出ることを嫌がる。 しかしヨセフの紹介で、団地の別の棟の、地方の老人の世話をするという仕事がもらえるのだった。
しかしそこには絶えず、男たちが出入りしていて、彼らの邪魔は決してしてはいけないし、必ず部屋に入るときはノックをするように言われる。 そこはドラッグの仲買人たちの集合場所だったのだった。 ただ、、報酬は良く、彼女は献身的に働くのだった。
だんだん絆が芽生えてくる3人だったが、ある日、ドラッグ絡みで、二つの勢力は銃撃戦を起こしてしまう。 そこでディーパン達にも危険が迫ってくるのだった…

邦題は 「~の闘い」 となっているのですが、正直闘いの意味が途中までは全くわかりませんでした。 それはスリランカの近年の状況がわからないとこの作品はぴんと来ないことが見終わった後感じました。
1983年から、ここは内戦が続いていたんですね。 そして26年にわたり紛争状態となっていて、4年前にようやく政府軍が鎮圧平定したそうです。 物語の主人公・ディーパンはこの負けた方の反政府組織・LTTEの人間、兵士のようですね。
彼の心の中には、もう闘いは終わったという自覚があり、その為にもう祖国を捨てたという決意でフランスに来たらしいのですが、中にはまだ戦いが終わっていないという元上司も登場してきます。 そして武器を買うために大金を彼にせびってくるんですね。 しかしディーパンはそれに屈せず、必死に耐えて、今の生活にしがみつきます。
実は彼には家族がいて、妻と二人の子供は戦いの悲しんでしまったという過去がありました。 唯一持っていた写真を額に入れ、ふたをするシーンは痛ましかったです。
しかしラストの今の “家族” を守るために立ち上がった彼は凄まじかったです。
監督はジャック・オーディアール、前作の 「君と歩く世界」http://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/9065316.html の世界観は好きでした。 今作も渾身の作品だと思いますし、スリランカという国の状況、歴史がよくわかりました。
パリ郊外のチンピラと、革命戦士の闘いに対するレベルの違いもなかなか凄味がありました。
あのラストは現実なのか、それとも彼の夢なのか? 現実であってほしいシーンでした。

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偽装夫婦のふたり

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そして彼らも偽装親子

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仲介者のヨセフ

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しかしここはドラッグの売人たちの巣だった

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ここの元締めのブラヒム

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そして彼らの抗争に巻き込まれていく

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