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約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯

2012年作品、齋藤潤一監督、仲代達矢主演。

東京オリンピックを控え、高度経済成長に沸く1961年。 三重県名張市の山間にある18戸の葛尾という小さな村で農業に勤しむ35歳の奥西勝(山本太郎)は、妻・千恵子と13歳の息子、5歳の娘とともに慎ましくも幸せに暮らしていた。
3月28日、毎年恒例の村人たちの懇親会が行われるが、間もなくぶどう酒を口にした女性たち15人が倒れ、千恵子を含む5人が死亡。 警察は殺人事件として捜査を開始する。 これが“名張毒ぶどう酒事件”と呼ばれる事件の始まりだった。
重要参考人として連行された奥西は、事件から6日後に逮捕。 三角関係を清算するため、妻と愛人の毒殺を計画し、ぶどう酒に農薬を入れたと自白したのである。
だが奥西の言葉はその後一転、自白を強要されたとして、無罪を主張する。この事件は、物的証拠がほとんどなく、奥西の自白が逮捕の決め手だった。
1964年、津地方裁判所の小川潤裁判長は、自白は信憑性がなく、物的証拠も乏しいとして、無罪を言い渡す。 しかし、検察側が控訴。 5年後の1969年、名古屋高等裁判所で一審の無罪判決が破棄され、死刑判決が言い渡された。 自白が不当な取り調べに基づくという疑いを示す証拠がないというのが判決理由だった。
戦後の裁判で唯一、無罪から極刑への逆転判決。そして1972年、最高裁で死刑が確定した。
しかし、その後、人権団体の川村富左吉(天野鎮雄)が奥西(仲代達也)の元に現れ、彼はどうもこの事件はおかしいと話し始める。 そして彼との出会いをきっかけに弁護団が結成され、繰り返し再審請求が行なわれるのだったが…

普通、死刑の判決がいったん出たものが、再審請求され、再審が認められると、大体無罪判決の流れになるようです。 これは多くの謎が張り巡らされている事件に思えますね。
三重県名張市という場所がら、東海テレビの製作の今作品、若いころの奥西氏を山本太郎、壮年以降を仲代達也が演じていて、彼の母・タツノを樹木希林、人権団体の河村氏を天野鎮雄が演じています。
それ以外はほぼドキュメンタリーで、実際の取材映像を流したり、当時の映像を使っています。 今作はいったん再審請求が認められた後に検察がが控訴して、なんと再審決定を棄却するという、なかなか前代未聞の展開になっていくんですね。
世の中ではこういう流れはあまりなく、また差し戻しという消極的な方法で、名古屋地裁にやらせるというやり方が、後に物議を呼びます。 
最高裁判断で、再審決定をできなかったのか? 裁判官自身も後悔の弁を述べることも異例のようです。
奥西氏も、獄中病に倒れ、この作品時点では存命でしたが、ついに力尽き昨年の10月に亡くなっています。
もし、これが冤罪であったとしたら、という前提ですが、これは国家的な殺人ですね。同じように不可思議な自白のみの証拠から、獄中死した帝銀事件の平沢貞通氏を思い出す事件であり、これが「第二の帝銀事件」と呼ばれるに至っています。
謎多いもやもやとした事件のドキュメンタリーでした。

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事件は1961年に起こった

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彼が逮捕される

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現場検証で息子たちに声を掛けられる

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死刑判決を受け長い獄中生活の奥西

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人権団体の川村が現れ再審の流れになるが…

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息子の無実を信じる母

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