anttiorbの映画、映像の世界

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光のノスタルジア

2010年作品、パトリシオ・グスマン監督。

チリ・アタカマ砂漠。 標高3,000メートルの高地、空気も乾燥しているため天文観測拠点として世界中から天文学者たちが集まってくる。 だが一方でここは、政治犯として捕らわれた人々の遺体が埋まるピノチェト軍事政権下の弾圧の地でもあった。
生命の起源を求め天文学者たちが遠い銀河を探索するかたわらで、行方不明になった肉親の遺骨を捜し、砂漠を掘り返す女性たち。 永遠とも思われるような天文学上の時間と、独裁政権下で愛する者を失った遺族たちの止まってしまった時間が交差する…

ドキュメンタリー作品の今作、パトリシオ・グスマンはキュメンタリー作品を多く撮っている監督さんのようです。 ギンレイホールでは、同時発表の2作品をめずらしく1週間で差し替えるみたいですね。
冒頭の感じでは、チリという巨大望遠鏡計画“アルマ望遠鏡計画”のお話なのかな? と思いましたが、この作品の視点はアタカマ砂漠に焦点を当てた話になっています。
この地域というのは、独特なところみたいですね。 アタカマ砂漠というのは、超乾燥地域で、ところによっては40年間まったく雨が降らなかったところもあるそうです。 その地は極度に乾燥していて、ひび割れを通り越した、水分が全くない状態がすすむとこうなってしまうんだという荒涼とした地域です。
ここを見ていると、火星の風景のようですね。
しかし映画は、そんな独特な地形、風土を利用した天体観測の大掛かりな世界的プロジェクトをさらりと触れながら、チリ独裁政権時のホロコーストを抉っていくんですね。
チリという国は、多くの天然資源が取れる国という印象を持っていますし、私の仕事でも、チリからくる輸入品の代表的なものが思い浮かびます。 リーチングと言って、銅鉱石に硫酸をかけて、不純物を落とす。 それだけ銅を含んだ鉱石が取れる場所という事であり、私が知っている中では、世界一の沃素生産国ですね。 世界のおよそ6割強がチリ産です。 ちなみに第2の生産国は、日本なんですが(^^)
まあそんなイメージがあるチリですが、悲しい歴史があることを今作で初めて知りました。
社会主義国家のアジェンデ政権から、クーデターが起き、ピノチェト将軍という支配体制の極左国家が誕生しました。 そしてこの政権が1973年から実権を握り、大虐殺を行ったとされています。 そしてその死体を埋めたのが、この砂漠だという事なんですね。
そしていまだに遺骨を家族に渡らない例、渡ってもほんの一部だったり、この作品に出てくる女性たちはもう高齢なんですが、思想的に弾圧され、殺された、弟だったり息子だったり、彼女たちは今でも砂漠に行き遺骨を探しているという事です。
どうやら、発覚を恐れいったん砂漠に埋めた死体を掘り返し、別のところに捨てたという事実もあるようで、彼女たちは情報公開を求めているそうです。
見ながらどんどん辛い方向の話になって行ったドキュメンタリーでしたが、これも人類の歴史の一部であり、忌まわしく醜い行いを戒めるためにも、残しておくべき作品ですね。(G)

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巨大な天体観測設備

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そんなアタカマ砂漠だが

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資源採掘で亡くなった人たちの墓地

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遺骨が見つからない人たちの写真群

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いまだの遺骨を探す遺族たち

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そんな彼女たちが宇宙を見つめる

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