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きみはいい子

2015年作品、呉美保監督、高良健吾尾野真千子池脇千鶴冨田靖子出演。

桜ヶ丘小学校4年2組を受け持つ新米教師・岡野匡(高良健吾)は、まじめだが優柔不断、問題に真っ正面から向き合えない性格だ。 そのためか、児童たちはなかなか彼の言うことをきいてくれず、恋人との仲もあいまいな状態が続いている。
水木雅美(尾野真千子)は、夫が海外に単身赴任中のため3歳の娘・あやねとふたり暮らし。 ママ友らに見せる笑顔の陰で、雅美は自宅でたびたびあやねに手をあげている。 
雅美は暑い日も長袖を着ている。 それは何かを隠そうとしているようだった。 ママ友たちと公園に行くのだが、あまりなじめない娘が気になって仕方がない。 でも、大宮陽子(池脇千鶴)だけは気さくに話しかけてくれて、その長男は娘を気軽に誘ってくれる。
陽子の夫は、教師をしていて、土曜日も学校に行ってしまう。 陽子は二人の子供をほとんど一人で見ているが、明るく生き生きしている。
小学校へと続く坂道の家にひとりで暮らす老人・佐々木あきこ(喜多道枝)が他人と会話をかわすのは、登下校の途中 で挨拶をしてくれる名前も知らない小学生だけであった。
櫻井弘也(加部亜門)というその少年は、母との二人暮らしで、母は昼間勤めに出ている。 そして彼は障害を持っていた。 
そんなある日、買い物に行ったスーパーでお金を払わずに店を出たことを店員の櫻井和美(富田靖子)に咎められ、あきこは認知症が始まったのかと不安を感じるようになる。
ひとつの町でそれぞれに暮らす彼らは、様々な局面で交差しながら、やがて新たな一歩を踏み出していく……

これも公開時に逃した作品でした。 呉美保監督作品は、「酒井家のしあわせhttp://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/12914085.html 、「そこのみにて光輝くhttp://blogs.yahoo.co.jp/atts1964/11504701.html と見ていますが、家族の問題を描いた作品と、辛辣な生きざまを描いた作品、両作品とも出来栄えが素晴らしく、視点を変えた今作も期待していました。
物語は、一応の主人公、1年目に担任を任された新任教師岡野匠を中心に回っていきます。 でも、彼とは直接かかわらない、水木雅美、大宮陽子、櫻井和美なども話に大きくかかわってきます。
まず驚くことは、今の小学校はここまで変わってしまったという事ですね。多少ふくらましているのかどうか、もう二十歳を過ぎた息子の時代とは違っているでしょうから何とも言えませんが、これが真実なら、ある意味教育は死んでいるのかもしれません。もう血が通っていませんから。
これは学校側だけの責任ではなく、国、親、地域すべてが何かおかしな方向にどんどん舵を切っているんだなあと恐ろしくなりました。
でも、大きなテーマも入っていましたね。 それは“ぬくもり”でした。
岡野が、雅美が、そして陽子がさらに子供たちが、それを感じて、何か心の中にちょっと温かいものが流れ始めたのかな? そこが重要なところでしたね。
バツイチで、実家に帰って来た匠の姉、内田慈が演じていた薫の一人息子が何気なく母親の真似をして、匠を慰めるシーン、ここはこちらも心に灯がともるところでした。
子供を抱きしめられない親、頭を撫でてあげられない親、それでも子供は母親に抱きつき、すり寄っていきます。
今の小学校の教師は大変ですね。 でもそれは親と教師が一緒に子供に向き合っていないからなんでしょう。 親は学校のせいにする、教師は親のせいにする、うわべだけの決まりを作って内部を見て見ないふりをする文科省、国家。
日本の将来が薄らコワくなる作品でしたが、その中に少しでもぬくもりが伝わってほしいなあと祈るような作品でした。(G)

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悪戦苦闘する新米教師・匠

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娘に笑ってあげれない母親・雅美

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他のママ友とは違う陽子

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なにかと励ましてくれる先輩教師・大宮

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あきこと和美

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