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生きものの記録

1955年作品、黒澤明監督、三船敏郎、志村嵩出演。

歯科医の原田(志村嵩)は家庭裁判所参与員になった。 家族のもめごとが持ち込まれるところで、なかなか嫌な仕事だが、原田は文句を言いながら結構やる気があるようだった。
裁判所に行くと、廊下で数人の男女が言い合いをしていた。 どうやら親子間のもめごとみたいだった。
廊下にいたのはよし(東郷晴子)、一郎(佐田豊)、二郎(千秋実)、すえ(青山京子)の二男二女がいる、ほか二人の妾とその子供、それにもう一人の妾腹の子、正妻の事、妾の子同士でも言い争いになっていた。
訴えているのは息子たちと妻のとよ(三好栄子)で、訴えられているのは都内に鋳物工場を経営し、かなりの財産を持つ中島喜一(三船敏郎)だった。
その内容は、喜一が原子爆弾とその放射能に対して被害妾想に陥り、地球上で安全な土地はもはや南米しかないとして近親者全員のブラジル移住を計画、全財産を抛ってもそれを断行しようとしていた。
一郎たちはこのまま喜一を放置しておいたら、本人の喜一だけでなく近親者全部の生活も破壊されるおそれがあるとして、家庭裁判所に対し、家族一同によって喜一を準禁治産者とする申立てを申請したのだった。
始めから両者は相いれない感じで、まずはお互いの言い分を聞くことから始めた。
そして、その後に次の日取りを決め、家族は帰っていった。
工場は、喜一の厳しい目で創業されており、仕事は順調だった。 しかしそんな現状をものともせず、喜一は裁判所の決定を待たずに、どんどん話を進め始めてしまうのだった。
そしてある日、工場兼自宅にある男を連れてきた。 それはブラジルに移住して成功した老人(東野英治郎)で、彼を連れて来て、家族の前で現地のフィルムを見せて唖然とさせる。
危機を感じた息子たちは、裁判所の日取りを繰り上げ、審議を早めることにするのだった。
医師の原田はそんな喜一の姿に、なにか打たれるものがあり、だんだんと、喜一の考えを真剣に取り上げようとするのだったが…

この作品は、ラジオ番組で、伊集院光が取り上げていたので、一度見たいと思っていました。
凄い作品ですね。 1955年とはそんな時代だったんですね。
10年前に第2次大戦が終わり、日本に痛ましい犠牲者が出た原爆が2発落されました。 しかしそんな核の恐怖を感じ怯え、しり込みするのでなく、人間はさらなる恐怖の核兵器をどんどん作りはじめたそんな時代なんですね。 もちろん核は未だに無くなることはなく、保有国はどんどん増え続けています。
黒澤監督は、そんな暗い時代を予知していたかの如くの作品ですね。
日本は被爆国であり、反して原発大国でもあります。
そして東日本大震災でが起き、福島原発事故が起こってさえ、経済優先という嘘の論理で原発を再稼働しようとする愚かな国なんですね。
この作品は、主人公の三船敏郎演じる中島喜一が、怯える核の質さえ違いますが、放射能の恐ろしさを、迷うことなく認識しています。
勿論皆がその恐ろしさを大なり小なり解っていますが、彼は鋭敏で、実行力があるんですね。 それが皮肉な結果にどんどんなっていきます。
ラストのある病院の医師の言葉が、監督が一番言いたかったセリフなんでしょうね。 衝撃作品で、後味はめちゃくちゃ悪いですが、日本人こそ、今また観るべき作品ではないでしょうか?

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歯科医の原田

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父とその他の家族の紛争

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彼の思いは家族を連れてブラジルに行くこと

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話し合いは平行線に

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最後は土下座までして懇願するが

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ついに事件が起こってしまう

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