anttiorbの映画、映像の世界

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太陽を盗んだ男

1979年作品、長谷川和彦監督、沢田研二主演。
 
東海村原子力発電所を遠目から双眼鏡で見つめる男がいた。
満員電車に揺られて通う先は中学校、城戸誠(沢田研二)は理科の教師だった。 そこそこ生徒にも人気がある。 独身生活で普通の暮らしをしていた、と思えたのだが。
古びたマンションに帰ってくると、中には猫がいる。 何やら実験器具がいろいろおかれている。 壁には図面も貼ってある。
交番の前を老人が横ぎった。 電話をかけている巡査(水谷豊)に近づいた老人は、いきなり殺虫剤を取り出し蚊を取ることを装い、巡査を眠らせ拳銃を奪っていった。
城戸は中学生を連れ社会科見学に行った。 そのバスに見慣れない男が乗ってきた。 機関銃と手榴弾武装した老人・山崎留吉(伊藤雄之助)は皇居に向かえと運転手に命令した。 
天皇陛下に話したいことがあると言う山崎は、バスジャック犯となり、生徒と城戸を人質にとり立てこもった。 山下警部(菅原文太)が指揮をとり呼びかけたとき、中から城戸が出てきた。 そして彼は山下に犯人の要求を言うのだ。
山下と城戸がバスに行き、犯人に接触、なんとか生徒を解放した後、一緒に出てきた山崎は射殺された。
城戸は一躍勇気ある行動を賞賛された。 
彼は授業でひたすら原子爆弾の話をするのだった。 もちろん生徒は訳が分からない。 そしてある日彼は行動に出た。 東海村への潜入、そしてプルトニウムを盗むと言う大胆な行動だった。 火炎放射器を準備し、まんまと盗むことに成功したのだった。 彼は原爆を作ろうとしているのだった…
 
沢田研二主演の問題作です。 歌手でも最盛期、そして俳優としてもこれは見応えのある作品に出会えました。 またよくこれが公開されましたね。 今は逆に製作されることも許されないでしょう。
一回の中学教師が原爆を作るために原子力発電所からプルトニウムを盗む。 今はもちろんですが、当時としてもそんな軟な警備体制ではなかったはずなので、ありえない話ですが、核に対するアンチテーゼの作品でしょう。 しかし当時はヒットしなかったんですね。 今では知る人ぞ知る映画です。 先日リバイバル上映が行われましたが、あっという間に前売りが完売したそうです。
当時の社会情勢は日本は高度成長期の真っただ中で、経済は勢いを持っていましたが、反面反体制派の元気もあった時代でした。 主人公城戸は、見たところノンポリに見えるんですよね。 右でも左でもない、でも何かに飢えている、そんな男です。
けっきょく原爆を作った後、警察や国家に要求することは、巨人戦の完全生中継だったり、最近来日していましたがローリングストーンズを呼んでコンサートを開けとか、一般人が実現してほしいちょっとしたことでした。
善し悪しはさておき、決して革命を起こそうとか、犯罪を起こそうとか思っていないところ(プルトニウムを盗んだり、警官を襲ったりは重大犯罪ですが)がなんかピントがずれている感じです。
でも作品中面白いことを言うんですね。 授業の時、原爆の作り方を延々と話していると、生徒から受験に役立つ授業をしてほしいと言われます。 
その時彼が言うセリフが 「受験勉強は塾で嫌というほどやっているだろう。 学校に来てまでやらなくてもいい」  誰も教えられないことを俺は教えているんだ、ということを言っているんですよね。 それがいいか悪いかはさておき、ちょっと風刺が効いているセリフでした。
人類が触れてはいけなかった“核”、アクション映画の形を取ってはいますが、たった一人の男がそれを持つと国家も動く、不気味な暗示を持った作品でした。

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バスジャック犯の人質になりに行く城戸と山下

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彼は中学教師、こんな授業をしている

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そして原爆を作っている

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山下との対決

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そして城戸は・・・

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